Madeleine L'Engle
1962年
SF/児童書(9~12歳対象)
50年近く愛され続けている児童書のSF
14歳のMeg Murryは、両親が科学者だというのに学校の成績は悪く、教師からは問題児扱いされ、同級生からは馬鹿にされている。双子の弟たちは社会に受け入れられる普通の子どもだが、一番年下の弟Charles Wallace(これ全部がファーストネーム)は、発達障害があるとみなされていて嘲笑の的になっている。
けれども実はMeg もCharles Wallaceも今で言うところのGifted(天賦の才がある子)で、通常の社会にフィットしないだけだったのだ。
Megたちの父親は数年前米国政府の秘密プロジェクトtesseract(a wrinkle in time=時のゆがみを利用したある種のタイムトラベル;つまり当時流行ったコンセプトのワープと思われる)に関わっている途中姿を消した。
父親の不在が家族に暗い影を落としているとき、浮浪者のようなMrs. Whatsitが家にやってくる。どうやらMrs. Whatsitは父親の消息を知っているらしい。
MegとCharles Wallaceは、Mrs. Whatsitを探しに行った場所で同じように他人には理解されない才能を持つ14歳の少年Calvinと出会い、Mrs. Whatsitとその友人(Mrs.WhichとMrs. Who)と一緒にtesseractでMrs.Whatsitの祖国の惑星に旅する。そこから彼らはMegの父親がとらわれている惑星Camazotzに行き、その世界の統率者で悪の権化ITに立ち向かう。
ITは有名なSF、1984のBig Brotherを連想する存在で、当時共産主義がどれほど脅威を与えていたかを感じさせる。
●ここが魅力!
現代では使い古された感のあるメッセージですが、この当時にしてはリベラルな宗教観や社会にフィットしない天賦の才がある子供の例など、児童書のSFとしてはなかなか深い哲学があります。1963年のニューベリー・メダルをはじめ数多くの賞を受賞した作品で、アメリカではSFのクラシックのひとつとみなされています。天使の役割を果たすMrs. Whatsit, Mrs.Which, Mrs. Whoなど親しみのわく異星人などの面白いキャラクターたち。児童書ですが、大人でもけっこう楽しめます。
●読みやすさ ★★★☆☆
基本的には単純な英語です。でも、古典の引用などアメリカで生まれ育っていないと混乱するような引用がときおりあります。わからない部分を飛ばしても、そう困らないと思います。また、場面のチェンジが唐突で混乱する箇所があるかもしれません。
大人の本よりもは読みやすいのですが、今流行っているヤングアダルトのTwilightよりは読みにくさを感じるでしょう。薄いので、読了はしやすいと思います。
●アダルト度 ★☆☆☆☆
9-12歳対象の児童書です。宗教観などのコンセプトが理解できるようになる小学校高学年くらいからをおすすめします。
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A Wrinkle in Time の4部作です。一番読者に好評なのは15歳になったCharles Wallaceが主人公のA Swiftly Tilting Planetで、一番人気がないのが双子が主人公のMany Watersのようです。
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