Candice Proctorには沢山の名前があります。本名のCandice Proctor名で書いているのは歴史ロマンス、C.S. Harris名で書いているのは歴史ミステリー(彼女の存在を知ったのはこれがきっかけ)、そしてご主人と共著している政治スリラーではC.S. Grahamという名前を使っています。
いずれも次世代に残るような高尚な文芸作品ではありませんし、大ベストセラーになるほど大衆ウケする娯楽作品でもありません。
また、私が最も好きな作品を書いた作家でもありません。
でも、「好きな作家のベスト10」を挙げるとしたら、たぶんその一人に入るでしょう。それは、登場人物に反映している彼女が好きだからです。
Candiceの父親は米国空軍諜報機関の管理職を務めており、彼女はドイツで育ちました。退職して大学教授になった父親の転職にともない米国に戻りますが、勉強ができるのに学校が大嫌いで、教師や体制と戦いすぎたのか高校を首席で卒業した生徒が行う慣わしになっている卒業式のスピーチをさせてもらえなかったというエピソードもあります(このあたり、私がすご~く共感するところです)。
大学では考古学とラテンとギリシャの古典を学び、発掘にも参加しています。卒業後、オーストラリア、アジア、アフリカ、ニューギニア…と世界中を旅したのち、イギリスで発掘に参加し、CIAからリクルートもされました。中東の歴史で学士号を取り、18、19世紀ヨーロッパの歴史で博士号を取得したCandiceは、大学助教授の職に就きます。
結婚相手は、ベトナム戦争も経験した軍人(現在は退職)です。彼もまたCandiceの父親のように陸軍諜報機関の士官でした。
放浪癖がある彼女はなかなかアカデミックな職に落ち着くことができず、本を書くことを考え付きます。
「出版するのが容易だから」という理由でロマンスブックを書くことに決めますが、本人自身がロマンスブックファンではないために、なかなか出版されなかったいきさつをCandiceはこんなふうに書いています。ロマンスの分野に対する私の心境を完璧に代弁してくれています。(Candice Proctorのサイトより引用)
I decided to try romances both because I'd loved Georgette Heyer and Mary Stewart as a teenager, and because I'd read a book that said they were easy to get published (big round of laughter here). Unfortunately, I never met a Harlequin I could finish (nothing against the genre, they just don't tap into my personal romantic fantasies) and the places I was living didn't sell books with half-naked men and women on the covers. It's hard to write for a market you don't read, which is one reason it took me FOREVER to get published.
このような背景があるCandiceが生み出した主人公たちは、男女とも意志が強く、独立心が強く、正義感があり、魅力的ですが、頑固で、欠陥だらけで、嘘もつけば過ちもおかします。そういった人物の複雑さが魅力なのです。また、Candice自身とご主人の経歴からは想像しにくいでしょうが、強いフェミニズム、反差別、戦争反対、のメッセージを受けます。豊富な体験と知識に基づいた作品なので、娯楽作品とはいえなかなか読み応えがあります。
さてそんな彼女が書いた作品をご紹介しましょう(それぞれの書評は後日に)。
まずは、私がCandiceに出会った最初の歴史ミステリーA Sebastian St. Cyr Mystery シリーズです。
2.When Gods Die
3.Why Mermaids Sing
4.Where Serpents Sleep
次は彼女がCandice Proctorとして書いた歴史ロマンスです(このジャンルではまだMidnight Confessions しか読んでいません)。
Beyond Sunrise
Midnight Confessions
Whispers of Heaven
The Bequest
最後に夫婦の共作の政治スリラーです(近いうちに読む予定です)
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