著者:Jennifer Niven
ハードカバー: 400ページ
出版社: Knopf Books for Young Readers
ISBN-10: 0385755880
発売日: 2015/1/6
適正年齢:PG15(性的シーン、精神疾患の重いテーマあり)
難易度:上級(2人の主人公が交互に一人称で語る。文章そのものは単純だが理解しにくい部分が多いと思う)
ジャンル:リアリスティックYA/青春小説
キーワード:双極性障害、自殺、自殺念慮/希死念慮、親子問題、家族関係、学校、恋愛、思春期の悩み
大学進学を控えたVioletとFinchは、同じ高校に通っているが付き合う仲間が違うのでこれまで接点がなかった。
チアリーダーをしている美人のVioletには誰もが羨むスポーツマンのボーイフレンドがいて、人気者グループに囲まれていた。いっぽうのFinchは、小学生のときから突拍子もないことをする変わり者として知られ、人気者グループに属さない風変わりな友人しかいない。
けれども、仲良しの姉を交通事故で失ってからというもののVioletは別人のようになっていた。ある日、学校の高い塔から衝動的に飛び降りようとしたところをFinchが助ける。それを目撃した生徒たちは、これまでのVioletとFinchのイメージから、「自殺しようとしたFinchをVioletが助けた」と誤解し、真実を知られたくないVioletはその噂を否定しない。
青春時代の危うい精神状態、死、愛を描くこの作品は、John Green、Gayle Forman(ジャンル別 洋書ベスト500に入れたIf I Stayの著者)、Rainbow Rowellなどの作品と比べられている。アマゾンでの読者の評価も高い。だから、ぞっこん惚れ込むのを期待して読んだのだが、私の受けた感覚はまったく逆のものだった。
正直を言うと、私はこの作品がとても嫌いだ。
大人は読んでもいいと思うけれど、若者には薦めたくない。
その理由はいくつかある。
読み始めてすぐ鼻についたのが「読者を泣かせるフォーミュラ」だ。
主人公二人のキャラクターが立体的なティーンとして浮かび上がってこない。二人の間に芽生える恋心にも本物らしさがない。他人から誤解されるFinchの言動が双極性障害をきちんと描いていると思えない。全体的に「こうすれば、こういう結果が得られる」と計算されて作られた作品だというイメージが最後まで抜けなかった。
この本を読み終わったのは8日前のことだが、好きではなかったのでそのまま本ブログでは紹介しないでおこうと思っていた。
その気を変えたのは、知り合いの子供が自殺したのを昨日知ったからだ。
長年問題を抱えていた兄のほうがようやく立ち直って自立したと聞いていたので、弟のほうの自殺は本当に寝耳に水でショックだった。
双極性障害は、本人だけでなく、周囲の者も悩み、苦しむ。
その状態を、この本はきちんと描いていない。それに、救いがない。読者を感動させ、泣かせるためだけに双極性障害や自殺を扱ってほしくはなかった。著者が双極性障害のことをよく知らないのであれば、そのまま(知らない)Violetの視点だけで書くべきだったと思う。
私が好きなJohn GreenやRainbow Rowellは、青春期の子供の心理のリアリスティックさを描くだけでなく、悲劇の中でも生きることを励ましていることだ。
この作品はそれに失敗している。
そう思ったので、あえて感想を書くことに決めた。
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