著者:Anne Tyler
ハードカバー: 368ページ
出版社: Knopf
ISBN-10: 1101874279
発売日: 2015/2/10
適正年齢:PG12(性的な話題やシーンはあるけれど、露骨な描写はない)
難易度:上級レベル(文章のニュアンスを楽しむためには文芸小説を読み慣れている必要がある)
ジャンル:文芸小説/現代小説
キーワード:アン・タイラー、夫婦、親子、兄弟の関係、メリーランド州ボルティモア、アメリカの家族
Whitshank一家は、ごく普通の家族だけれど、ごく普通の家族がそうであるように、「自分の家族は特別」だと思っている。特に、RedとAbbyが今住んでいる家を建てた建築業者のRedの父にその思いが強かった。
子供の頃からRedを知っていたAbbyが初めて彼に恋心を抱いたのがこの家で過ごしたある午後のことで、息子二人、娘二人を育てたのもこの家だった。
ところが、そこに長男のDennyが突然現れて自分が両親の世話をすると言い張る。
じつは、Dennyは子供の頃から親を手こずらせ、大人になってからは何度も家族の誰にも連絡先を教えず姿を消してきた。家族はDennyをあてにしないことに慣れていたのに、そのあてにならない長男が、親にずっと忠実だった末息子に突然競争心を抱いているようなのだ......。
Anne Tylerの小説に登場するのは、ごく普通のアメリカの夫婦や家族(特にメリーランド州ボルティモア)で、特に大きなことが起こらない。プロットを追うつもりで読むとがっかりするかもしれない。でも、「普通の人々」が誰でも持っているユニークな人格と人間関係を少し離れた距離から、ユーモアと愛情を持って語るとしたら、Anne Tylerを超える作家はそういない。
Tylerのこの最新作では、ボルティモアの中流家庭Whitshankの三代に渡る小さな(けれども家族にとっては重要な)歴史が語られている。それぞ れの夫婦の出会い、互いへの(時に屈折した)思いなど、外から見るとごく普通のつまらない人にもそれぞれに小説になるような体験があるものだと感じさせて くれる。誰の人生も、みんな「特別」なのだ。
Tylerは風変わりな人々を描いても、意地悪な視点がない。だからいつ読んでも安心できる。「この作品を最後に引退する」という噂が流れていたが、どうやらそうではないらしい。それを聞いてほっとした。
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