Jacquieline Kelly
352ページ(ハードカバー)
Henry Holt and Co
2009年5月12日発売
小学校高学年から高校生/家族ドラマ・成長物語/19世紀末から20世紀初めのテキサス
Battle of Kids
Books残念賞!シリーズ(2回戦で敗退)
2010年ニューベリー賞オナー受賞作品
20世紀を迎えようとしているテキサス州の裕福なTate家の娘Calpurniaは、6人兄弟に挟まれたたったひとりの女の子。女性が女性らしくあることを期待された時代だが、もともと自然の観察が好きな11歳のCalpurniaは、ダーウィンを崇拝する素人自然科学者の祖父のお気に入りになる。地元で尊敬され、家族からも畏怖されている祖父に守られて好きな採集をしてきたCalpurniaだが、裕福な白人層で当然とされる社交界デビューの年齢が近づくにつれ、母から刺繍、編み物、料理、といった「良い妻」になるための修業を強いられる。だが、Calpurniaがなりたいものは科学者なのだ。
Calpurniaの一人称の語りが躍動的で、大家族とのやりとりにも愛情が感じられる。この時代の人々の生活、考え方、が鮮明に描かれている。各章は短く、それぞれにクライマックスがある。
●ここが魅力的!これも実は昨年から読みたいと思っていたもので、Battle of the Kids Booksのおかげでようやく読むことができました。
第1ラウンドには勝ちましたが、第2ラウンドで敗退してしまいました。
この本の最大の魅力はCalpurnia自身です。
最初のほうの場面に、彼女が他の女の子とずいぶん違うことを示す心中の声があります。
One day I would have all the books in the world, shelves and shelves of them. I would live my life in a tower of books. I would read all day long and eat peaches. And if any young knights in armor dared to come calling on their white chargers and plead with me to let down my hair, I would pelt them with peach pits until they went home.
このラプンツェルは、白馬の騎士に救われるより桃を食べながら本を読んで暮らしたいと思っているのですね。それにしても、桃の種で追い払われる騎士の心中やいかに..。
もうひとつの魅力は、彼女と周囲の人々とのやりとりにあります。兄弟それぞれが活き活きと描かれていて、ちゃんと誰が誰なのか読者に伝わってきます。私のお気に入りは、動物にすぐ感情移入してしまうTravisです。サンクスギビングで料理される予定の七面鳥を好きになってしまってなんとか救おうとするところなどがとても微笑ましい光景でした。
また、ウィットに富んだ文章も魅力です。
例えば彼女が(生まれて初めて)失神し、顔に水をかけられて意識が戻って来ます。そのときの場面です。
(これまで何度も会ったことがある女性に向かって)“Hello, I’m pleased to make your acquaintance.”
For this I got another half bucket of water in the face.
そこで登場した祖父とCaplurniaのやりとりが最高です。
“Calpurnia,” he said,, “what is the order of the spider commonly known as daddy longlegs?”
“Opiliones,” I said tartly.
“Very good,” he said. “I believe she is coming around.”
“Stop that water, “ I said to the circle at large.
赤毛のアンとかトムソーヤとかが好きだった大人には、あの読書体験を思い出させてくれるノスタルジックな雰囲気の本でもあります。
●読みやすさ ★★★☆☆美しく優れた文章だからこそ読みやすい、という典型的な良文です。
とはいえ、洋書をある程度読み慣れていないと、可笑しい部分とかがわかりません。そういった意味で★が3つです。
●アダルト度 ★☆☆☆☆キスの話題とか大人の男性たちが変な会話をしますが、Calpurniaからの視点ですから小学校高学年から読んでも問題ないと思います。
大人が読んでも十分面白い、というか大人におすすめの児童書です。
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