Mark Haddon
2003年
ヤングアダルト/現代小説
非常に有名な本なので今さら私が書く必要はないのですが、より多くの方に読んでいただきたいのであえて載せました。
15歳の自閉症の少年Christopher Booneは、数学では並外れた能力があるものの、他人の表情を読み取ったり、感情のニュアンスを理解することができない。そのうえに色に関する強迫観念もある。(本人にとっては)論理的だが融通のきかない思考回路しかできないChristopherが他人と心を通わせることは難しい。
そんな彼が深夜に隣人のプードル犬が何者かに殺されているのを発見し、大好きなシャーロック・ホームズにならい、犯人を突き止めることにする。だが、犬の殺害事件を追ううちにChristopherは両親の仲が壊れていることを学び、ロンドンに住む母親と暮らすために自閉症にとっては大冒険である馴染みのない世界に足を踏み出す。
ミステリーというより、Christopherという自閉症の少年の世界をリアルに、そしてユーモアを持って描いた、YAというよりも大人向けの優れた文芸小説である。
●ここが魅力!
自閉症という重いテーマを扱いながらも、ユーモアに満ちた、面白い娯楽作品です。
Christopherの言動は他人からは不可解なものですが、本人にとっては非常に論理的なのです。数学好きでニュアンスが理解できない彼の思考回路は常人とかけ離れていて、それゆえにチャーミングで可笑しいのですが、面白いだけでなくChristopherや彼の父親に深い同情と愛情を覚える感動的な作品です。
章が素数であったり、数学の問題が沢山出てきたり、思考を説明するイラストがあったり、読書体験そのものを楽しめる工夫がちりばめられています。
●読みやすさ ★★★☆☆
★★★と★★★★の中間で、非常に読みやすい本です。
分からない単語があっても辞書を引かずに読み続けて十分理解できるでしょう。
●アダルト度 ★☆☆☆☆
「Do you mean that they were doing Sex?」という会話は出てきますが、それ以外に性的なトピックや暴力シーンなどはなく、小学生にも安心して読ませることができる本です。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。