Kate Chopin
1899年初刊
文芸小説/アメリカ文学
私は子供のころ「世界名作文学」オタクで、有名な作品は高校生のころほぼ読んでいます(勉強をしなかったので時間があったのです)。でも、以前書いた「大学生になるまでに読んでおきたい本」のリストにあるKate ChopinのAwakeningは読んだことがありませんでした。
今年の夏、高校生の娘が「夏休みの間に読んでおかなくてはならないから注文しといて」と渡したリストにこのAwakeningがありましたのでこの機会に読んでみました。
●あらすじ
1899年発表の作品。
New Orleans の裕福なビジネスマンの妻 Edna Pontellierは家族と共に避暑地Grand Isleで夏を過ごしていた。Grand Isleのリゾート地では夫はビジネスや個人的な道楽に時間を費やし、放置されている彼女はリゾート地で過ごす他の人々と交流するようになっていた。その中でも彼女が親しくなったのは、Adele Ratignolleとリゾートの女主人の息子Robert Lebrunだった。Ednaは、良妻賢母の象徴のようなAdeleと比較し、夫の所有物である妻の立場や、母としての自然な愛情を実感できない自分に疑問を抱くようになる。自分と一緒に過ごすことや会話を楽しんでくれるのは、Robertだった。毎年一人の女性を選んで過剰に親しくなることで知られる若いRobertとEdnaは、その夏友人以上の感情を抱き始める。しかし、それが危険な感情だと悟ったRobertは、彼女を忘れようとしてメキシコに去る。
New Orleansに戻ってからのEdnaは、がんじがらめになっている息苦しさから抜け出そうとあがくが、夫の Léonceは良き妻としての役割を放棄しているEdnaの状態を理解せずに医師に診察させたりする。Ednaはついに家を飛び出すが、心身の自由と幸福の探求は破壊へと向かってゆく。
道徳的ではないとして酷評され、何十年も廃刊であったが、フェミニズムの台頭で再発掘されそれ以降重要なアメリカ文学として扱われるようになった作品。
●ここが魅力!
今の時代に読むと、「それがどうした?」的な感覚を得ますが、これを歴史的な背景と合わせて読むと「なるほど」と感じるようになります。女性が大統領候補になれる現代とは異なり、19世紀のアメリカでは女性は結婚前は父親の、そして結婚後は夫の所有物でした。もちろん投票権などはありません。良き妻として夫に尽くし、子供を育てるのが女性の唯一の存在意義でした。けれども、Civil Warの後、女性には新たに多くの人権が与えられるようになり、妻や母以外の生き方も可能になってきました。Chopinがこの作品を発表したのはそんな時代です。彼女は、たぶん「新しい女性の生き方」を読者に考えさせたかったのでしょう。
第一章で夫のLéonceが日焼けしたEdnaを見る場面にそれがはっきりと描かれています。
“You are burnt beyond recognition,”he added, looking at his wife as one looks at a valuable piece of personal property which has suffered some damage.
夫は妻のそのものにはまったく無関心なのに、外観や妻としての役割に関しては非常に批判的な関心を抱きます。Ednaに共感する女性はいたはずですが、小説の中での彼女の行動(道徳心)は嵐のように批判され、従って作品も酷評されたようです。この時代にこんな小説を発表したChopinの勇気には脱帽です。
●読みやすさ ★★★☆☆
各章が短く、全体的にもページ数が少ない小説ですから読了しやすいと思います。文芸小説ですが、さほど難しい表現はありません。古い作品としてはたぶん読みやすい部類でしょう。
●アダルト度 ★★☆☆☆
不倫場面はありますが、あの時代らしくディテールはありません。表現されているのはキス程度までとあとは「そういうことがあった」ことをにおわせているだけです。
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