作者:Jennifer Donnelly
592 ページ
2003年3月
St. Martin's Griffin
商業的文芸小説/歴史ロマンス(19世紀の英国とニューヨーク市)
舞台は1880年代のロンドン。貧乏なアイルランド移民が多いテームズ川沿いのWhitechapel地区で育った幼なじみのFionaとJoeは、将来店を経営する夢を抱き、一緒に貯金をしていた。だがWhitechapel地区出身で成り上がりの成功者にセールスの才能を見込まれたJoeは、そのひとり娘の策略にひかかって結婚に追い込まれる。
FionaはJoeとの将来の夢を失っただけでなく、同時期に父と母、兄妹を失う。
父の死に関係がある会社の経営者に命を狙われたFionaは、 家族のうちひとりだけ生き残った幼い弟を連れてアメリカに渡航する。
ニューヨーク市で商店を経営するMichael叔父を探しあてるが、叔父はうつで自暴自棄になっている。Fionaは持ち前のビジネスセンスと人を魅了する性格で経営困難になっていた店を大きく成功させる。
だが、ビジネスウーマンとして成功したFionaは、父の復讐を果たすために英国に戻る。そこで再会したのはJoeだった。
●ここが魅力!
ともかく、最初から最後までとてもドラマチック。
ひとつの作品にまとめてしまうのがもったいないくらい沢山のドラマが詰め込まれています。600ページ近いボリュームなのに全然飽きません。
FionaとJoeの恋はまるで一昔前の昼メロのように誤解あり、すれ違いあり、でメロドラマそのものですが、彼らを応援せずにはいられない、心温まるタイプのロマンスです。 また、若い女性のFionaが得意なお茶のビジネスで成功してゆくドラマとしても十分面白い作品です。 19世紀のロンドンの下町や活気あるニューヨーク市の雰囲気、粋で明るいのに気の毒な運命のゲイの男性との友情などの詳細も楽しく、なぜか私は「NHKの連ドラ」を連想しました。
Amazon.comの読者評価平均がものすごく高い作品です。
●読みやすさ ★★★☆☆
歴史小説としては19世紀末ですから現代に近い言い回しですし、現代的なスラングはありませんが、ロンドンの下町訛はちょっとつらいかも。でも、根本的にはわかりやすい英語です。また、退屈な描写がないので、長くても飽きることはないと思います。
●アダルト度 ★★★☆☆
セックスシーンは600ページの間に4回くらい。典型的なロマンスブックではありませんが、高校生以上。
●この本を気に入った方は、
Winter Rose
Tea Roseの続編ですが、主人公は陰の大物となって生き延びていたFionaの兄と上流階級の女性には許されない医師の職を選んだ女性。フィオナとジョーも出てきますが、「重要な脇役」といったところです。
The Northern Light
YA向けの作品ですが、クラシック文学を連想させ、なかなか読み応えがあります。私の友人は「十代の娘に読ませたい作品のトップ10」に挙げています。
いつか詳しいレビューを書くつもりです。
コメント
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