Ronnie Wood
2007年10月初版
368ページ
St. Martin's Press
回想録/ロック
有名人の回想録はそれこそ星の数ほどあるし、星のように毎日のように誕生しています。
たいていの有名人は文章なんて書けないから、売れっ子ゴーストライターを雇い、彼らの取材に、「そうね、あのとき私は…」と答えるだけ。「そんな本にお金を払いたくない」と私は思うのですが、暴露本の感覚で読む方は多いようで、ゴーストライターによる回想録はけっこう売れています。
でも、The Rolling StonesのRonnie Wood(ロン・ウッドではなく、Wood本人がこの名前を使っています)のRonnieは、ロックの回想録ではこれ以上の傑作はないと断言できるほどの豪華絢爛な内容です。
その理由は次のとおりです。
1.全部自分で書いている。しかも、それがけっこう読める文章で面白い。
2.ものすごく正直。「えーっ!こんなこと書いていいの?」と仰天する内容が次々と。
Ronnie本人の恋愛暦やドラッグ暦だけではなく、ミック、キースといったストーンズの仲間、そして(私くらいの年齢のロックファンにはおなじみの)Eric Clapton, Rod Stewart, Jimmy Page, Keith Moon, Jimi Hendrix, Pete Townshendといった顔ぶれのエピソードが、ビビッドに書き込まれています(ところで、同じ頃に出たEric Claptonの回想録は読む価値ないです…)。
3.Ronnie自身が書きためた絵画とイラスト、写真などが満載。
「満載」という表現はただの使い古した表現ではなく、本当に「満載」です。このイラストがまたとっても味があるのです。各章のタイトルも自筆。本そのものがアートになっていて、これを読むと、「ストーンズでもっとも多才なのはRonnieかも…」と思うようになります。音楽とビジネスではミックやキースには及びませんが。
深みがない、間違いがある、という批判もありますが、それはRonnieの性格と記憶力を反映しているだけだと思います。記憶力で言えば、私なんか彼の100分の1も自分の半生を思い出せませんから、Ronnieは偉いと思いますよ。
●読みやすさ ★★★☆☆
★★★と★★★★の中間レベル。60年代から70年代のロックシーンのファンであれば、読みやすさはぐっと上がります。でも、そうでない人は固有名詞があふれるこの本は読みづらいこと間違いなし。
回想録ですから文章は話し言葉に近くて簡単ですが、意外とボキャブラリが多くて文芸的なと箇所もあります。
358ページありますから、読み終えるのには時間がかかります。雑誌や短編のように他の本を読む合間に少しずつ読む、というやり方が一番良いのではないかと思います。
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