Alan Bradley
2009年4月
ミステリー(1950年英国が舞台)
むかしの英国が舞台のミステリーって、必ずといっていいほど紅茶とお菓子が出てきますよね。私が英国ものに弱いのは、そのせいもあるかもしれません。この本にFortnum and Masonのアッサムティーの温めなおしをInspectorに出すシーンがあるので、私もTaylors of Harrogateのアッサムティーの温めなおしを飲みながら書くことにします。
(あらすじ)
第二次世界大戦後の1950年の英国の小さな村Bishop Laceyが舞台。この地方の旧家de Luceの11歳の末娘Flaviaは、エキセントリックな大叔父と亡くなった母親が残した化学の実験室で毒の実験をするのが趣味だ。愛する妻を失ったFlaviaの父は切手蒐集の趣味に没頭し、17歳と13歳の姉たちは異性や本の世界に心を奪われていて誰も彼女の相手をしてくれない。ひとりだけFlaviaを気にかけてくれるのは戦時中に父の部隊で一緒に闘った庭師のDoggerだが、彼はトラウマの後遺症でときどき奇妙な言動を取る。
ある日、屋敷にくちばしに1ペニー切手をつけた死んだJack snipe(シギの一種)が届き、Flaviaの父は青ざめる。Flaviaはその日父を尋ねた謎の人物が翌朝庭で息を引き取る場面に立ち会う。殺人罪で逮捕された父のぬれ衣をはらすために、Flaviaはひとりで探偵を始める。
どうやらこの殺人には過去にある切手をめぐって起こった殺人がからんでいるようだった。
利発で恐れを知らぬ大胆な主人公のFlaviaは、漫画の主人公にするとウケそうな気がする。
これはデビュー作だが、変人が揃ったde Luce家の先祖や亡くなった母親Harrietの謎など、今後のシリーズでだんだん明らかになってきそう。
カナダのCrime Writers’ Association Debut Dagger Award受賞作。
●ここが魅力!
私の娘はバイオレンスとホラーが苦手。その彼女がアガサ・クリスティのミス・マープルの大ファンなのは、殺人がbloodyではなくて昔の英国のゆったりペースで謎解きを楽しめるところです。このミステリーの主人公は上品な老女のミス・マープルではなくて、化学実験(特に毒)と悪戯が好きな11歳の少女Flaviaですが、どちらも好奇心旺盛な女性で他人の秘密に興味しんしんなところがよく似ています。
先が読めてしまうところがあり、ミステリーとしては物足りないものがありましたが、どこでも自転車で走り回る活発なFlaviaと一緒に冒険を楽しませていただきました。
●読みやすさ★★☆☆☆
イギリス英語に慣れている方はさほど難しく感じないかもしれませんが、アメリカのYAなどに慣れている方には読み難いのではないかと思います。Flaviaの一人称ですが、天才的な少女ということになっているので、もったいぶった表現が多く、従って単語もやや難しいものが使われています。
●アダルト度 ★☆☆☆☆
殺人以外にはとくに子供に読ませて困るようなところはありません。
探偵ものが好きな子であれば中学生くらいから楽しめるでしょう。
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