Deanna Raybourn
2009年3月
歴史ミステリー/ロマンス(でもハーレークイン式のロマンスではありません)
BrisbaneはヨークシャーGrimsgraveにある旧家の館を買い取り、改装を助けるというJuliaの姉Portiaの申し出を受け入れるがJuliaは連れてくるなと強調する。その後、Portiaの訪問すら断るBrisbaneの手紙が届き、彼の精神状態を案じたJuliaたちはヨークシャーに向かう。
ジプシーの血が混じるBrisbaneとAllenby一家との過去にはそれよりも重大な過去の秘密があるのだが、Juliaはそれを知らない。Allenby家の死んだ長男が残したエジプトの古美術を記録していたJuliaが偶然双子のミイラを発見した直後、何者かがBrisbaneの命を狙う。
嵐が丘を連想させる暗いヨークシャーのMoor(荒地)を舞台に、旧家の秘密とジプシーの呪いがからみ、階級が異なるために成就不可能なJuliaとBrisbaneのロマンスもクライマックスを迎える(ネタばれになるから結末は秘密)。それには一応の決着がつくが、Lady Julia Grayシリーズは今後も続く予定である。
●ここが魅力!
今回はAllenby家の秘密からBrisbaneの過去が明らかになり、ジプシーの呪いも絡んだ謎が興味深いミステリーです。2巻まではゆっくり進行していたJuliaとBrisbaneのロマンスが急速に山場を迎えます。アクションあり、ロマンスあり、となかなか盛りだくさんの第三巻です。
内容の読者評価は非常に良いのですが、表紙は大悪評です。そもそもこのシリーズに惚れ込んだのはミステリーファン。「ひどい。内容と合っていない。恥ずかしくて外で読めない」という苦情が続出。だいたい、ヴィクトリア時代にこんな服は存在しません。出版社は、ファンタジーのPoison Studyも上梓しているハーレークインの子会社Miraで、最近はミステリーでもファンタジーでもハーレークイン式の表紙にすることで読者層を広げようとしているようです。作者のRaybournも嫌がっているみたいですが、出版社の意向ですから仕方ありません。内容も、完璧にミステリーの第1巻に比べるとロマンスが前面に押し出されてきていて、出版社のコントロールを感じます。ゆえに、ミステリーファンとしては今後が少々心配です。
生粋のロマンス本ファンには物足りないと思いますが、オースティン的なロマンスファンにはほどよいロマンスです。
●読みやすさ ★★★☆☆
最初のSilent in the Graveに比べると文章がずいぶん現代的になり、読みやすくなっています。でも、ビクトリア時代の慣わしや当時の表現を使った会話は慣れていない人にはわかりにくいでしょうから、★★と★★★の中間です。すでに2巻を読み終えた方でしたら状況を把握しているので簡単に読めるでしょう。
●アダルト度 ★★☆☆☆
キス程度。ロマンスでもそれ以上の表現はなんとなく匂わせるだけで奥ゆかしいものです。
●この本に興味を持った方はこちらからどうぞ……
Silent in the Grave
コメント
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