Lynne Griffin
2009年4月
心理サスペンス/現代小説
muse & marketplace特集第3回でご紹介するのは、元看護師でカウンセラーも勤めた医療と心理の専門家Lynne Griffinです。テレビのコメンテーターをするだけあって、スピーチも慣れたものです。明るくて、元気一杯、という印象でした。作者のサイトはこちら。
(あらすじ)
ジャーナリストのTessaは4歳の娘Abbyをひき逃げで失う。
深い鬱に陥っているTessaは医師にすすめられて心理カウンセリングを受け始める。
礼儀を重んじる堅苦しいカウンセラーのCeliaに反感を覚えながらも、Tessaは逃げた犯人への憎しみや、娘を失った後ですぐに復職できた夫への不満などの鬱憤をぶつける。
すべてが完璧そうなCeliaだが、実は彼女自身が家庭に問題を抱えていた。アルコール依存症の夫と離婚して大学教授と再婚したが、彼と15歳の息子の関係は敵意に満ちている。
Tessaが犯人さがしに執着しはじめる一方で、Celiaの息子は高校で問題行動を起こし始め、離婚した前夫の元に去ってしまう。
TessaとCeliaという2人のまったく性格が異なる母親が、ある事件をきっかけに繋がり、それぞれに喪失と贖罪を体験するドラマチックな心理サスペンス。
心理と倫理観を取り扱っているためJodi Picoultを連想させるデビュー作。
●ここが魅力!
個人的には、まず元看護師(私もそうです)でカウンセラーをしていた子育て専門家というところに惹かれます。登場人物の設定も実体験から生み出されたためにリアルで、欠陥があるけれども同情せずにはいられなくなります。特に私が評価するのは、子供を失った後の夫婦の心理的危機をよく描いていることです。人によって悲嘆への対処方法は異なり、ある人はTessaのように過去にしがみついて鬱に陥りますが、ある人は過去を忘れたくて仕事に没頭しようとします。死者の持ち物を捨てられない者と捨てることで悲しみを薄らげようとする者、どちらも深い悲しみに傷つけられているのですが、互いに自分とは異なる反応を示す伴侶を「許せない」と感じるのです。ですから、子供を失った夫婦が離婚するのは決してめずらしいことではありません。そういったことや、日記を使ったセラピーなどをごく自然にストーリーに取り込んでいることがこの本の魅力です。
わが子を失う、というストーリーは母親として読みづらいところはありますし、先が読めてしまう(私はそうでしたが、他の人はそうでもないようです)ところがありますが、デビュー作とは思えない熟練さを感じる作品です。
●読みやすさ ★★★☆☆
2人の日記の形をとっているので、入り込みやすく、読みやすいでしょう。
●アダルト度 ★★★☆☆
性的シーンは1箇所だけありますが、それほどあからさまな描写ではなく、中学生からOKでしょう。
コメント
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