Jon Ronson ハードカバー: 288ページ 出版社: Riverhead Hardcover (2011/5/12) ノンフィクション/精神医療
この本を一言で説明するのはとても難しい。
「Psychopath Test」という題名からは、サイコパシー(精神病質)とサイコパスについて分析する本を想像するが、そうではない。どちらかというと、 「A Journey Through the Madness Industry(狂気産業での遍歴)」という副題のほうが、この本の内容をよく表している。 著者は、ジョージ・クルーニー主演で映画化された「The Men Who Stare at Goats (書籍の邦題は「アメリカ超能力部隊」、映画は「ヤギと男と男と壁と」)」で世界的に有名になった英国人ジャーナリストのジョン・ロンスンである。彼は、変人を引寄せる特殊な能力でも知られているようだ。
Kenneth Slawenski ハードカバー: 464ページ 出版社: Random House (2011/1/25) ノンフィクション/伝記
サリンジャーの分析や伝記はこれまでにも多く出版されている。けれども、1952年にニューハンプシャーの田舎町コーニッシュに移住してから頑にプライバシーを守った彼の人生を知るための材料は殆どない。サリンジャーの死後初めてメジャーな出版社(ランダムハウス社)から出版される伝記「J. D. Salinger: A Life 」は、「これまでに明らかにされなかった新たなマテリアルが含まれているのでは?」と注目されていた。
自分で書いてもいないのに「ニューヨークタイムズ紙ベストセラー作家」を自称するペイリンと同じカテゴリーに入れたことがバレたら、自称「タイガーマザー」の著者に頭から喰われてしまうかもしれないが、私の中では「Battle Hymn of the Tiger Mother」のAmy ChuaとSarah Palinの姿が重なるのである。
私がパティ・スミスの名前を知ったのは、1980年代前半だった。高校時代から大の英国ロックファンで81年に英国に行った私は、それまでいくつかの例外をのぞき、米国のロックにはまったく興味がなかった。だが、ロック雑誌に載っていた彼女の写真があまりにも強烈だったために、彼女に興味を抱いて音楽を聴いてみた。若すぎたのか、当時は正直言ってヒット曲のBecause the Night以外の曲の良さをあまり理解できなかったのだが、印象的な声と異様にやせこけた女性のパワフルな視線が、ずっと脳裏に焼き付いていた。 その写真は、じつは有名な写真家ロバート・メイプルソープが撮ったものだったのだ。
Not Marryの例のひとつは”Freedom to go where one liked”です。結婚すると「ビーグル号」での航海のような冒険ができなくなることを悩んでいるのですね。これは現代の男性にも通じるリストですが、決して尊大さの現れではなく、彼の論理的思考を象徴している微笑ましいエピソードです。
副題:Obama and the Clintons, McCain and Palin, and the Race of a Lifetime John Heilemann、 Mark Halperin 464ページ(ハードカバー) Harper 2010/1/11 政治/時事/ノンフィクション
発売日にアマゾンで在庫切れになるほど話題になったGame Changeは、ベテラン政治ジャーナリストのJohn Heilemann(New York Magazineの政治コラムニスト。これまでthe New Yorker, Wired, The Economistなどのライターを務めた)とMark Halperin(Timeマガジンの編集長でシニア政治アナリスト)の2人が書いた2008年大統領選挙の裏舞台ドラマのダイジェスト版である。
昔は私もよくプレゼンをしましたし、外資系の会社に勤務しているころは英語のプレゼンや講演の通訳もやりました。だからダメなプレゼンがどんなものかは熟知していると言っても過言ではありません。最悪なプレゼンは聴衆を無視した自己満足なものです。ジョブズは、プレゼンテーションとはロックコンサートや演劇のパフォーマンスのようなものであり、「お客様」に「素晴らしい体験」をしていただくことが大切なのだと自覚しています。「Your Audience wants to be informed, educated, and entertained」とGalloが説明するように、聴衆は、製品の情報だけでなく、なんらかの学びと楽しい体験を期待しているのです。
ジョブズはプレゼンを古典文学のように3つのAct(劇の幕)に分けています。起承転結という感じですね。そこでGalloも本書を3つのActに分けています。 1幕の「Create the Story」では、まず製品に関する、観客を虜にするようなエキサイティングなストーリーを作り上げる方法を説いています。 2幕の「Deliver the Experience」は製品の実際の内容や使い方を説明する方法ですが、ただ説明するのではなく、観客に「これが欲しい」いや「持たねばならぬ」と思いこませるような体験を与える方法です。 3幕の「Refine and Rehearse」は演出と練習です。演劇を少しでもやったことがある方ならピンとくるでしょうが、単純に見えるシーンの背後には綿密なプランと練習があります。ここでは、衣装からボディランゲージ、声の調子など細部の演出について説明しています。
難しい言葉を使って語ろうと思えばいくらでもそうできる複雑な内容を、非常にシンプルな言葉(ジョブズもそう)でシンプルに説明しているところが最大の魅力です。私が気に入ったフレーズの一例は’ Deliver a “holy shit” moment’ 。この一言で多くのことがいっぺんに理解できてしまいますよね。それから‘Sell dreams, not products‘というフレーズなんかも。優れたコミュニケーションがどういうものであるかをGallo自身が実践しているわけですね。
サブタイトルが「The End of the World as We Know It」なので、今後のGoogleがいかに世界を制覇していくのかといったことまで言及されていると想像しますが、そうでもありません。また、ITに詳しい人にとっては技術的な考察が足りないらしく、それらが米国の読者の批判になっているようです。ですが、社会現象に好奇心を抱く私のようなタイプにはそれぞれの人間性にも触れることができ、非常に面白い本です。これまでに多くのGoogle本が出ていますが、ぐいぐい引き込ませる文章力ではAulettaがたぶんトップでしょう。
著者のBeth Maloneyはハリウッドの映画界で活躍する弁護士だったが、離婚後3人の息子と東海岸のメイン州に引っ越す。離婚の辛さから回復し、虐待あるいは放任された未成年者のguardian ad litem(訴訟後見人)の仕事に情熱を抱くBethはようやく念願の自宅を購入した。だが、ビーチ沿いの借家から持ち家に引っ越したときから、健康で優等生だった12歳の真ん中の息子Sammyが突然奇妙な行動を取るようになる。
「PANDAS:Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorders Associated with Streptococcal Infections 連鎖球菌性小児自己免疫神経精神障害」という耳慣れない疾病は、National Institute of Mental Health(米国立精神衛生研究所)のSwedoらが2006年に研究発表した概念です。
著者:Terry Weible Murphy(文章), Michael A. Jenike(精神科医), Edward E. Zine(患者) 256ページ 出版社: William Morrow 2009年4月14日 エッセイ・回想録/ノンフィクション/OCD(強迫性障害)
Life in Rewind: The Story of a Young Courageous Man Who Persevered Over OCD and the Harvard Doctor Who Broke All the Rules to Help Himという長ったらしいタイトルのノンフィクションを実際に書いたのはベテランのテレビプロデューサーTerry Murphyである。Michael A. Jenike医師のおかげで息子の強迫性障害が改善したという経験を持つMurphyは、患者の励みになる本を書こうと思い立ち、Jenikeに相談した。そこで紹介されたのがEdward E. Zineという患者だった。 実はこのJenike医師は、強迫性障害の分野では非常に著名なハーバード大学医学部精神科教授であり、以前私が翻訳した強迫性障害に関する本にも登場している。高名な医師が紹介するのだから当然私たちは彼の治療で奇跡的に素晴らしい回復を成し遂げたケースだと想像する。ところがEdはJenikeの失敗例なのである。3年におよぶ治療がすべて失敗した絶望的な重症例にも関わらず、患者本人が自力で回復したという稀なケースなのだ。 「治療の失敗例を読んでどうする?」と言う読者もいるようだが、この本の素晴らしさは実はそこにあると私は思う。
Life in Rewindは、「この方法を使ったら、見事に症状がよくなった!」という典型的な本ではない。Jenike医師の努力にもかかわらずEdは回復しないし、改善した後でも理由はわからない。読者はそこに苛立つかもしれない。だが、この実に正直な体験談に、医師から見放された重症患者はかえって「自分にもできるかもしれない」という勇気を得るのではないかと私は思った。
最近のコメント