8年ほど前、男女の考え方の差をわかりやすく解説したMen Are from Mars, Women Are from Venusが世界的なベストセラーになった。私も、カップルのカウンセリングが専門のジョン・グレイが書いたこの本を当時読んで、面白いと思った。けれども、「ステレオタイプ過ぎるのではないだろうか?」というしっくりこないところはあった。グレイが説明する典型的な男性の行動は、「アメリカ人男性」のものであり、あまり「日本人男性」を連想させなかったこともある。また、「なぜこういった違いが生じるのか?」という解説はまったくなかったので、エンターテイメントとしての読み方しかできなかった。
他にも男女差について解説した本は多いが、専門家が脳科学的に説明したベストセラーといえばThe Female Brain、そして今年3月に発売された同じ著者の最新刊がThe Male Brainである。
カリフォルニア大学バークリー校で神経生物学を専攻し、イェール大学大学院で医学を学んだBrizendineは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の教育者でもあり、現役の臨床医でもある。Women's Mood and Hormone Clinicを設立したBrizendineは、多くの症例を通じてホルモンが女性に与える影響を熟知しており、その体験を元にして書いたThe Female Brainは世界的なベストセラーになった。
そのThe Female Brainにも男性の脳についての記述はあるのだが、特に男性の脳に焦点を絞って書いたのが、続編ともいえるThe Male Brainである。
どちらの本も、冒頭で典型的な女性的思考と男性的思考に関係がある脳の分野を簡単に説明している。
それらを少しご紹介しよう。
女性脳:
1.Anterior Cingulate Cortex(前帯状皮質),:選択肢を比べ、決断する場所。くよくよ心配する中枢であり、男性より女性のほうが大きい。
2.Prefrontal Cortex(前頭前皮質):感情を司り、それが暴走しないよう抑える上。扁桃体にブレーキをかける。男性より女性のほうが大きく、成熟するのは、思春期の少女のほうが少年より2年早い。
男性脳:
1.Medial Preoptic Area(視床下部の一部の内側視索前野):性的追求のための部分であり、女性よりも2.5倍大きい。
2.Temporal Parietal Junction(側頭頭頂接合部):解決策を探求する部分。難題に直面したときに、即座に問題解決しようとする。
次に男女差を生み出す立役者であるホルモンとその影響の紹介がある。
女性:
Estrogen, Progesterone, Testosterone
男性:
Testosterone, Vasopressin, Mullerian Inhibiting Substance
その次に、生涯でホルモンがどのように変化し、それが脳にどのような影響を与えるかの表がある。コンパクトだが、非常にわかりやすくまとめてある。
これらの導入部分に続く各論は、医学的知識がなくても十分分かったつもりになるし、楽しめる。
なぜ女性がよく他人の顔色を伺うのか、そして「つるむ」のか、不思議に思っている男性は、The Female Brainを読むと「ははあ、なるほど」と思うに違いない。また、思春期の息子が急に無口になったことを案じる母親は「そういうことだったの!」と吹き出し、胸をなでおろすことだろう。また、夫を子育てに参加させたいと思っている若い母親は、The Daddy Brainの章を読んで戦略を練ることもできる。
しかし、特に利用しなくても、話のネタにするだけでも面白い。カップルで読んでみて、「本当にそう?」と話し合ってみるのもいいかもしれない。
●読みやすさ やや簡単〜中程度
医学用語(脳の部位やホルモンの名称)が沢山出てきますが、それらは一般人の読者には「なんとなくわかった」程度でかまわないと思います。
専門用語以外は、とても簡単な英語です。学校英語しか知らない日本人にとっては小説よりも読みやすいのではないかと思います。
また、全部を一度に読み通さなくても、時間があるときに雑誌代わりに読んで楽しめるとも思います。
●カップルカウンセリングの立場から男女差を書いた1993年初版のベストセラー
Men Are from Mars, Women Are from Venus
ameterumさん、こんにちは。
ご指摘いただいて私が読んだペーパーバック(クリーム色の表紙)のハードカバー版をチェックしあら...あれま、1993年初版の本ではありませんか!そして、いつ読んだのかよ〜く考えてみたら、娘が小さくて、ameterumさんのように暗い思いを抱えていた時代だったのを思い出しました。だから、はっきり分からないのですが、たぶんペーパーバックが出た1998年なのでしょうね。
つい最近のことのように感じていましたが、それも歳を取った証拠かも...
ameterumさんがおっしゃるように、ただ「お前も大変なんだね」と分かって欲しい、というのは私がずっと抱えている悩みです。今は以前より軽くなりましたが、それでもまだ継続しています。
ときおり、こういう本を読むと「脳が違うのだから、仕方ないか」と思い出させてくれて、心がやや軽くなります。
同じような「問題解決型」の夫を持つ友人と、定期的に会ってウォーキングしながら愚痴ります。なかなか良いストレス解消法ですよ(笑)
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2010/10/17 07:31
アマゾンでは2004年発行になってるけど、私が買ったのは、どう考えても2000年より前・・・あれ? で、表紙のデザインを元に探すと、1993年に出たハードカバーがヒット。だけど、手許にあるのはペーパーバックだし???・・・結局、英国アマゾンのサイトで発見:http://amzn.to/bJO9Az
ついでに、大出版社の子会社のことをインプリントと言うことを覚えました。発行年を確かめるために見た奥付に Thosons An Imprint of HarperCollins Puslishers とあったので。
投稿情報: ameterum | 2010/10/16 10:41
Men Are from Mars, Women Are from Venus
10年以上前に購入した、私のバイブル。今回、多読チャレンジのノンフィクションとして読み返しました。
異国で、異常に手がかかる育児でボロボロだった私と、多忙で過労死寸前の夫。手伝ってくれなくてもいいから、せめて私の状況や気持ちを理解してほしいと言う私と、理解よりも解決だと言う夫。「おまえも大変だな」という一言で(たとえ口にしなくても、そう思ってくれてるってことが感じられさえすれば)元気が出るのに、愚痴なんか聞いても仕方ない、こうすればいいじゃないか、と「共感」をすっとばして(前向きに)解決策だけ授けようとする夫が人非人にすら思われたものです。が、解決してくれなくてもいいから、理解してほしいというのは、女性特有の感じ方だったのですね。この本を読むことで、夫の思考回路も、かなり理解できたように思います。
少し値下げされていたからという理由で買ったWhy Men Don't Listen &Women Can't Read Maps(£4.99 というシールが未だに貼ってある)も面白かった。熟年離婚を避けるため(?)、こちらも再読しようかしら。
投稿情報: ameterum | 2010/10/16 08:15