Anna Jarzab
352ページ(ハードカバー)
Delacorte Books for Young Readers
2010/1/12発売
ヤングアダルト(YA:高校生)/ミステリー/青春小説
夏休みが終わりジュニア(米国は高校が4年制でその3年生)の学年が始まろうとしていたある日、Neilyが昔つき合っていた少女Carlyが殺害された。あれから1年経ち、シニア(4年生)の学年が始まろうとしているのに、Neilyはまだ事件の悪夢から立ち直れずにいた。
NeilyとCarlyは、カリフォルニアの名門私立Brighton Day School の優等生が属する特別プログラムで知り合った。このプログラムに属する生徒は、学校の人気者たちからはクールではない連中として無視されており、NeilyとCarlyはそんな環境で互いを支えあう親友だった。親友として互いを知り合い、それから付き合い始めた2人の絆は簡単なことでは切れないほど強いものだと信じていたが、Carlyの従妹Audreyが引っ越してきたのとCarlyの母が卵巣がんで死んだのをきっかけに2人の仲に亀裂が入る。そしてCarlyは屈辱的な方法でNeilyを捨て、高校で最も畏怖され憧れられているAdamと付き合い始める。Carlyが殺される前日に助けを求める電話をかけてきたのに応えなかったNeilyは、自分を残酷に扱ったCarlyも、彼女を救えなかった自分も許すことができずにいる。
新学年が始まると、1年間別の学校に移っていたCarlyの従妹AudreyがDay Schoolに戻っていた。Audreyの父親はCarlyの殺人犯として逮捕されており、友人からの苛めにあった彼女は転校したのだった。彼女はNeilyに真犯人探しのパートナーになるよう頼むが、Neilyは戸惑う。そもそもCarlyがAdamとつき合うようになったきっかけはAudreyなのだ。AudreyのボーイフレンドCassとAdamは大の親友で、高校で最も人気あるグループを操っており、優等生のCarlyが酒やドラッグをするようになったのはAudreyがそれらの友人グループに彼女を誘い込んだからだ。
互いにあまり好感を抱いておらず、会うたびに互いを傷つける言葉を交わさずにはいられないAudreyとNeilyが交互に語るストーリーは、ミステリーとしてだけでなく、青春小説としても読み応えがある。
●ここが魅力!米国の名門私立高校内の社会経済的構造、思春期特有の不安や葛藤、ティーンらしい恋愛観と執着心、お金はあるけれど崩壊状態の家族と崩壊した親子関係を、巧妙にしかも静謐に描いています。
Carly, Neily, Audreyの3人は自己中心的であまり好感を抱けませんが、それゆえに本物のティーンらしさを感じます。そして、事件を解決する過程で築き上げたNeilyとAudreyの友情と精神的な成長も、最後に青春小説らしい希望を与えてくれます。ミステリーとしてはゆっくりした展開ですが、静かに謎をひきずってゆくところがなかなか優れたスリラーです。
●読みやすさ ★★★★☆YAものでしかも一人称で書かれているので、読みやすいと思います。会話文が多く、難しい単語もあまりありません。
また、YAものにしては静謐で詩的な文章に好感が持てます。
●アダルト度 ★★★☆☆シーンの細かい描写はないのですが、セックス、レイプ、ドラッグなどの話題が出てきます。従って高校生以上が対象です。
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