A.S. King
ハードカバー: 336ページ
出版社: Knopf Books for Young Readers (2010/10/12)
ヤングアダルト(YA)/青春小説/社会問題
2011年プリンツ賞オナー賞受賞作
17才のVera Dietzの人生は悩みだらけだ。17才で妊娠したために父と結婚した母は常に人生に不満をいだき、数年前に家族を捨てて駆け落ちした。その母にはストリッパー、父にはアルコール中毒の過去がある。娘が自分たちと同じ過ちをおかすのを阻止しようとする父親は、Veraに過剰な義務を与える。
精神的重圧のひとつは元親友Charlieの死だ。Charlieは、以前から反社会的なところがあったが決して悪人ではなかった。なのに、Jenny Flickという意地悪な女子生徒と関わり始めてからすっかり変わってしまった。VeraがCharlieの秘密を漏らしたというJennyの嘘を信じ、Veraの母の秘密を全校にふりまいてしまう。徹底的に嫌がらせをするCharlieとついに決別したのに、Charlieの幽霊がつきまとって離れないのだ。どうやらCharlieはVeraに何かを頼みたいようだ。そのうえ、JennyはCharlieが死んだ後もVeraへの虐めをやめようとはしない。
Charlieの思い出と幽霊、そしてJennyと仲間の虐めに悩まされながらも、Veraは父の教え通りに全てを「無視」することで対処しようとする。無視で消え去らない心の痛みを和らげてくれるのがウォッカだった。
Veraと父のKenは、ある事件をきっかけにようやく心の奥底にしまってきた本音をぶつけあう。そしてVeraは、Charlieの幽霊の要求をかなえてやることにする。
●ここが魅力!
Twilightの成功のおかげで最近のYAには異常にパラノーマルファンタジー溢れています。そのヤングアダルト分野で、非常に新鮮な読書体験を与えてくれるのが、このPlease Ignore Vera Dietzです。
まず、18才の高校生Veraがけなげです。世の中の不条理をひとりで引き受けてがんばっているところが、まるで「じゃりん子チエ」のようです(ちょっと変なたとえですが)。
努力して良い成績を取っている娘を良い大学に入れるよりも、ピザ屋で働かせてコミュニティカレッジで学べばよいと考えている父のKenに対してフラストレーションを覚える読者もいるでしょう。ストリッパーなんかをして、家族を捨てたくせにVeraに説教を試みる母親をどやしつけたくなるでしょう。親友だったくせに、Veraを裏切り続けるCharlieには愛情を与える価値なんかないと思う人もいるでしょう。
けれども、Please Ignore Vera Dietzは、そういった不条理の中にもユーモアのセンスを見いだし、「そういう愛もあるんだ」と納得させてくれます。
難しいテーマを扱いながらも、読後感が清々しい本です。
●読みやすさ やや読みやすい
文法的には簡単です。
米国に住んでいないとピンとこない部分もあるでしょうが、比較的読みやすい本だと思います。
●対象となる年齢
性、ドラッグ、アルコール中毒といったテーマを扱っていますので、高校生以上です。
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