Eric Segalstad(文筆業/ミュージシャン)、Josh Hunter(イラストレーター)
312ページ
出版社:Randam House
2009年4月発売
アート本/音楽/ノンフィクション/グラフィックノベル(小説ではないけれどこのジャンルに入れている人がいるから)
今年のBook Expo Americaでは、大手出版社の暗さと自費出版やインディ出版の活気の差が目立ちました。業界の雰囲気をそのまま反映していたようです。また、業界では自費出版で成功を収めて大手から出版されるケースも目立ってきました。
Eric SegalstadとJosh Hunterが作ったThe 27s: The Greatest Myth of Rock & Rollもそのひとつです。彼らは、既成の概念を超えらない出版社にフラストレーションを覚え、アーティストのクリエイティビティを活かす本作りのために自らSamadhi Creationsという出版社をクリエートしてしまったというすごい若者たちです。このマニア向けの本が話題になり、今年4月に大手のRandam Houseからトレードーペーパーとして新たに出版されました。
ロック界には、天才的なミュージシャンが27歳で死ぬという現象があり、それが伝説化しています。
27歳で亡くなった代表的な人物は、NirvanaのKurt Cobain(カート・コバーン)、DoorsのJim Morrison(ジム・モリソン)、Jimi Hendrix(ジミー・ヘンドリックス)、Janis Joplin(
ジャニス・ジョプリン)、そしてRolling StonesのリーダーだったBrian Jones(ブライアン・ジョーンズ)などです。
Kurt Cobainに関しては殺人説もありますが、"It's better to burn out than to fade away,"つまり「凋落するよりもは燃え尽きたほうがいい」といった意味の遺書を残した自殺が有名です。また日本人がジミヘンと呼ぶ天才ギタリストのJimi Hendrixは、今でもラジオのクラシックロックで「最高のギタリスト」にノミネートされます。京都で英会話学校に通っていたとき私が自分のニックネームに選んだのはJanis JoplinからとったJanisでした。どちらも私がティーンになる前(1970年)に死亡していますが、ロックファンだった私にとっては青春時代を思い出す懐かしい名前です。
でも、この本で紹介されているのはこれらの有名なミュージシャンだけではありません。27歳で亡くなったロックミュージシャンはほかにも30人もいるのです。この本は時代から忘れられているそれらのミュージシャンへの鎮魂歌でもあります。
27歳伝説の真相にせまるThe 27s: The Greatest Myth of Rock & Rollを手にとったとき、私は高校生のころに田舎の本屋からビートルズの写真集を取り寄せたことを思い出しました。届くまでになんと8ヶ月ほどかかり、お小遣いがすっかり底をつく値段でしたが、1ページ1ページを大切に眺め、納得したものです。The 27sも既存の本とは異なり、丹念な作りです。紙の質もすばらしく、スタイリッシュなイラスト、地図、年表、音楽豆知識などが、1ページごとにアートとして提供され、ミュージシャンと彼らが生きた時代を視覚的に表現してくれます。それにしても、作成にこんなにお金がかかる本を日本のAmazonでも2700円ちょっとで入手できるというのはすごいと思います。だって、全ページカラーなんですよ!
私はいつでも手にとって眺められるように、リビングルームのコーヒーテーブルの上にオバマ大統領就任記念の本とともに飾っています。
●読みやすさ ★★★☆☆
ロックファンであれば固有名詞がわかるでしょうから、難しくないと思います。
通常のノンフィクションというよりも、大人の絵本といった感じです。
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