4章 志ある町民が志ある学校を作る
レキシントン町教育委員会(School Committee)の委員長トム・ディアス氏は、「ほかの州に住んだことがない人にはわかりにくいかもしれませんが……」と前置きしてから、「レキシントンは、特殊な町なのです」と説明してくれました。
「マサチューセッツ州に比べると、他の州の地方自治体は、はるかに政府まかせなんです。愚痴は言うけれども、自分の手で改善しようとしない」
この言葉は胸にぐさりときました。
日本に住んでいた頃の私は自分が住んでいる町や市がどのように運営されているかなんて、まったく知りませんでした。税金の使い道にも興味もありませんでした。学校や政府が私たちの面倒を見てくれるのが当たり前だと思っていましたから、それが裏切られると、失望し、立腹したものです。
私が学生のころにはまだ学生運動(というよりも内ゲバなどの暴力抗争)が盛んでしたが、体制への失望は「破壊」の勢いには繋がっても、「改善」への意欲にはなっていませんでした。彼らの言動に嫌悪感を抱くのに十分な実体験をした私は政治的なものにアレルギーを覚えるようになっていましたから「地方自治体の運営に手を貸す」という方法があるとは考えてもみなかったのです。
「マサチューセッツ州の住民は行政のプロセスに自分たちが参加するのは当然の権利だと信じているのですが、レキシントン町の住民はさらにその意志が強いのですよ」とディアス氏は言います。
ディアス氏の説明に移る前に、レキシントン町の背景を簡単にご紹介しましょう。
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