560 ページ(ペーパーバック)
Scholastic Paperbacks
2003年初版
小学校3、4年生〜中学生/ファンタジー
2003年に出版されて大ヒットし、2008年に映画化されたInkheartシリーズ第一作
12才の少女Meggieはブックバインダー(古い本を修理する仕事)の父のMoと2人きりで暮らしている。ある夜、父のことをSilvertongueと呼ぶ奇妙な訪問者Dustfingerが訪れる。Capricorn という悪人がMoと彼が所有するInkheartという本を追っているらしい。Moには本を音読すると本に登場する物や人物が飛び出してくるという奇妙な力がある。だが、その能力には、その代わりに現実の存在が本に吸い込まれてしまうという困ったオマケもついている。最悪なのは何が飛び出し、何が本に吸い込まれてしまうのか、彼にはコントロールできないことだ。
Meggieが幼いとき、MoがMeggieの母Teresa(Resa)にInkheartという題名の本を読み聴かせているときに、CapricornとDustfingerが本の中から現れ、代わりにMeggieの母ResaがInkheartに吸い込まれてしまった。父はそれを娘に内緒にしてきたがDustfingerの出現で真実を打ち明けることになる。MoとMeggieの2人は彼らの味方だというDustfinger と一緒に本好きの叔母のElinorもとに逃亡するが、Moは誘拐されてしまう。Dustfinger に騙されてMoを救出に行ったMeggieとElinorもCapricornにとらえられInkheartも奪われてしまう。
DustfingerがCapricornを助けたのは、本の世界に戻りたかったからなのだが、Capricornの目的はそれではなく、Moに「宝島」などの本を読ませ、宝を手に入れることだった。だが、不思議な力をコントロールする能力がないMoは、 One Thousand And One Nights(アラビアンナイト)からFaridという少年を出してしまう。
「本から登場人物が出てきたら...」という子どもにありがちの夢を物語にしたこのファンタジーの三部作はベストセラーになり、2008年に映画化された。
映画の予告編
●感想
ちょうど娘が10歳のころに出版されて人気になったもので、ファンタジー好きの娘も当時手に取りました。でも、全然熱中せず放り投げたので、私も今まで読まなかったのでした。洋書ファンクラブJr.のプログラムのために今回読んだのですが、私も娘と同じように途中で放り投げたくなってしまったというのが正直な感想です。
「本を読んだら、そこから登場人物が出てくる」というのは、とても素敵な設定です。Inkheartには「宝島」や「ピーターパン」など子どもが考えつきそうな本がたくさん登場します。最初のうち、面白くなりそうな本なのになかなか面白くならないな、と思っていたら、ページをめくるうちにそれがだんだん面倒くさくなってきました。
その理由を挙げてみます。
1.ページ数が多い本はディテールや会話にバラエティがあり面白い必要がある。Inkheartにはそれが欠けている。
2.キャラクターが薄っぺらい。感情に現実味がない。したがって、それらの人物の運命がどうなっても構わない気がしてしまう。
3.悪人を「あいつは非常に悪い」とか「恐ろしい奴」と何度も言葉で説明しておきながら、その恐ろしさを肌で感じさせてくれない。
4.長いストーリーだがひねりや盛り上がりに欠け、ページをめくる動機になる謎やドキドキがない。
悪人がそんなに酷いことをしないのは、小学生にとっては良いことかもしれません。けれども、そうであればこんなに長い話を書く必要があるのか、また三部作にする必要があるのか、よくわかりません。商業的に大成功した本ですから、きっと面白いと思う子どもは沢山いるのでしょう。
「洋書ファンクラブJr.」の読書プログラム参加者で小3(今月小4)のMoeさんとディスカッションしてみました。(Moeさんの感想は洋書ファンクラブJr.でどうぞ)
私の意見には「そう言われてみればそう感じる」ということでしたが、彼女の年頃の良いところは、本に欠けているところを自分の想像力で自然に補っていることです。ですから、MoeさんはこのInkheartを十分「面白い」と感じたようです。そういう子どもの視点はとても大切だと思いました。
●読みやすさ ★★★★☆
文章は簡単です。覚えにくい名前(ファンタジーの特長ですね)が出てくるのが難ですが、普通に存在する名前ではないのであまり気にせず、絵のような感覚で見分ければそれで十分です。
●アダルト度 ☆☆☆☆☆
文さえ読めれば小学校低学年からOKです。
●このシリーズのの続編
Inkspell
Inkdeath
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