Kristin Cashore
480ページ(ハードカバー)
Dial (October 5,
2009年10月5日発売
ヤングアダルト/ファンタジー
(注:これは5月に入手したAdvanced Reader's Copyの感想です)
ベストセラーとなったデビュー作Gracelingの隣国The Dellsが舞台。時代がGracelingより前なので、いわゆる「前編」と呼ぶべきだが、物語としては完全に独立している。ただし、Gracelingを読んでいないとプロローグでつまずくことになるので、まずGracelingを読むことをお勧めする。
Gracelingとは険しい山岳を隔てているためにまったく交流がない王国The Dellsには、左右の目の色が異なるGracelingはいないが、モンスターと呼ばれる不思議な生物たちがいた。モンスターたちはその対となる動物とそっくりだが自然界にはない鮮やかな彩りであり、対の動物よりも美しく凶暴である。そしてモンスター同士の血と肉を好む特性もある。人間のモンスターは髪の色が鮮やかで、異常に美しく、他人の思考を操作する能力も備わっている。
だが、いろいろな理由で人間のモンスターはほぼ絶滅状態になり、生き残っているのは若い女性のFireだけだった。
Fireの亡き父Cansrelはモンスターの残酷さを象徴する人物で、ただの娯楽として他人の心を操り、Fireの母を含む多くの者の人生を破壊してきた。Cansrelの死後は人徳ある貴族のBrockerがFireの保護者の役割を勤め、彼の義理の息子ArcherはFireに何度も結婚を申し込んでいた。けれども、Fireが産む子は優性遺伝で必ずモンスターになる。父の犯した多くの罪を知るFireは、そんなモンスターを世に生み出さないために一生結婚も子供を産むこともしないと決意している。
The Dellsでは政治的な緊張が高まっており、Fireが住む地でもスパイが捕まり、送り手を確かめる前に殺害されてしまう。いっぽう、王国の若き王Nashは統率力に欠けており、軍事力を持つ貴族たちが謀反を企み、軍事同盟を結ぼうとしていた。Nashの弟のBriganは軍事的には兄よりも優れていたが、初対面のときからFireに激しい敵意を示す。FireとArcherははからずも内戦の危機に巻き込まれてゆく。
●ここが魅力!
Gracelingに引き続き、強くて勇気ある若い女性が主人公です。
特に今回は、見る人の心を狂わせてしまうほど美しい「モンスター」が主人公だと言うのですから興味津々。けれどもFireにとって美しさや人の心を読む才能は呪いでしかありません。彼女は呪われた自分の運命を自ら変えようとして戦います。
Fireに対して過剰ともいえる所有欲を持ちながらもいろいろな女性に手を出さずにはいられないArcherの複雑な心情、そしてそんなArcherと友情を保とうとするFireの苦悩など、普通のヤングアダルトのロマンスに比べるとずっと成熟した愛を語ろうとしています。
●読みやすさ ★★★☆☆
基本的には読みやすい本ですが、ファンタジー特有の造語が沢山あります。それと、ネーミングのひどさも気になります。弓が得意な貴族のニックネームがArcherで、これが名前として使われているのですが、その他に多くの無名の射手archerが出てきます。大文字のがアーチャーという人物で小文字が射手というのは慣れない人には混乱するかもしれません。
けれども、Twilightが読めた方でしたら難なく読めるでしょう。でもTwilightよりもやや成熟した読み方を要するかもしれません。
●アダルト度 ★★★☆☆
露骨ではありませんが、性行為や避妊に言及しています。テーマからは高校生以上が対象です。中学生向けではありません。
●この作品が好きな方、あるいは興味を抱いた方はGracelingをどうぞ!
Glacelingはペーパーバックになりました!
GracelingについてはBattle of the Kids Booksでもご紹介しました
コメント
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