著者: Kristin Cashore
発売日:2008年10月1日
ジャンル:ファンタジー/ヤングアダルト/ロマンス(やや)
強くて美しく、けれども非社交的で怒りっぽいヒロインの自分探しの冒険
中世を思わせる架空の王国では、右と左の目の色が異なる「Graceling」にはある特定の才能がある。青い目と緑の目を持つKatsaの才能は「殺し」。幼いときに自己防衛で叔父を殺して以来、王子であるいとこ以外に友と呼べる者も心を許せる者もいない。この才能ゆえに王から脅しの使徒として使われているKatsaは、命令に背く選択が許されない立場とはいえ自分の行動を恥じ、平和のための秘密組織を運営している。
隣国の王の年老いた父が誘拐されるが、どの国の王が命じたことなのか誰にもわからない。その国の末っ子の王子で金と銀の目を持つGracelingのPoとKatsaは、この謎を解くために危険な旅に出る。
ヒロインのKatsaは他人の怠慢や弱音が我慢ならず、すぐに苛立ち、けんか腰になる癖がある。心の奥底では友人や友情を求めているくせに、それを得るためにどうしたらよいのかは分からない。そもそも他人の心境を理解することができないし、したいとも思わないのだ。こういうところは、アスペルガー患者の回想記を読んでいるような感じがしないでもない。
彼女に他人を信頼することを教えたのが、Poである。Poのキャラクターは、たぶん娘や彼女の友人たちの理想の男性像に近いだろう。強い戦士だが、女性のKatsaに劣ることは平然と認めるし、欠陥だらけのヒロインを受け入れる懐の深さがある。つまり、真に自信がある男性なのだ。唯一困った特徴は彼のGracelingとしての才能である(これは内緒)。
私の娘やその友達、そしてAmazon.comの読者の評価からは、女子中学生から高校生に長く愛されるロングセラーになることが予測される良質のファンタジーである。
●ここが魅力!
これも高校生の娘とその友人たちのために探してきたヤングアダルト向けのファンタジー+ロマンス本です。ロマンスの要素はあるのですが、普通のロマンスと異なるのはヒロイン自身が普通のロマンスを拒否するところです。つまり、王子様に愛されて、結婚して、めでたし、めでたし、というエンディングではなく、ヒロインが自分を見失わずに成長する物語なのです。
娘とその友人たちのお気に入りの本のひとつになりました。
また、本を読んだ後で母娘であれこれ感想を話し合えるのもよいところです。
●読みやすさ ★★★☆☆
ファンタジー特有の造語が多いために読みにくい印象を受けるかもしれませんが、基本的には簡潔で読みやすい文です。Twilightが読めた人であれば難なく読めるでしょう。
●アダルト度 ★★★☆☆
マイルドですがセックスシーンがありますので、小学生向けではありません。
14歳以上のヤングアダルトが対象です。
●これが気に入った方はぜひ続編(前編)Fireをどうぞ
コメント
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