Dan Brown 528ページ(ハードカバー) 2009年9月15日発売 Doubleday Books スリラー
(あらすじ) Angel & Demons The Da Vinci Codeでおなじみのハーバード大学のSymbologist、Robert Langdonが主人公。 長年の友人で有名なフリーメイソンのメンバーPeter Solomonから講演を依頼されたLongdonは、ボストンから急遽ワシントンDCに向かう。だが、ワシントンDCで彼を待ち受けていたのは、フリーメイソンが長年守り続けた危険な秘密とそれを手に入れようとするパワフルな敵だった。
●感想
まず、この本は15日の夜入手したので16日には読了する予定だったのです。それなのに、読み終えるのに4日もかかってしまいました。 その理由は、椅子に座って読み始めると必ず1時間以内に「ぐが〜」っとねむりこけてしまい、なかなか先にすすまなかったから。それも ” To his horror, something was staring back.”といった「はらはらドキドキ」的な章のエンディング(これがまた多いのですよ)でさえ気がつくと「ぐが〜」という恐ろしさ。中・高生のときに悩まされたナルコレプシー的発作がぶりかえしたのかと心配したくらいです。それに、ふだんなら家事を後回しにしても読みたい活字中毒の私が、読書の途中で床を眺めて「掃除機かけなくちゃ」と嫌いな掃除を始めるというのはThe Lost Symbolの謎より深刻な問題なのでは?
内容ですが、扱っているのがフリーメイソンやnoetic scienceと異なるものの、プロットはこれまでと根本的に同一です。謎ときは沢山あるのですが、同じようなパターンで驚きがないから退屈になるのです。たとえば「Melencolia I, 1514」の絵を観た中心人物(賢いことになっている女性)が”...I see nothing ----- I give up.”というところ。よほど観察力がない人以外絵の中で真っ先に目につくのがこれなので、つい「どこ見てんのよ?」と本に向かって悪態をついてしまいました。そのうえ誰でもわかるような簡単な謎解きにその後の何ページも割いているのにもうんざり。登場人物が大騒ぎするわりにはそれぞれの謎解きに驚きがなく、ひとつの謎が次の謎を呼ぶというパターンにも斬新さがありません。 最後に驚きが用意されていることを期待していたのですが、これもアンチクライマックスでした。
もうひとつの問題は文章です。 The Da Vinci Codeも文章力はさほどありませんでしたが、スピード感のある展開で、謎解きの楽しさもあり、文章の稚拙さがさほど気になりませんでした。 でも今回はそのスピード感や謎解きの楽しみがあまりないために、表現の陳腐さが目立つのです。例えばmassiveという形容詞です。massiveというと私はすぐに「massive heart attack (非常に重篤な心臓発作)」を連想してしまうのですが、Brownは(特に「やめてくれ」と言いたくなる陳腐な箇所を含め)肉体の部分から扉までなんでもかんでも巨大なものがmassiveらしく(enormousもありましたが)気が散って困りました。他にも学校で学ぶような典型的な表現が多く、ついマーカーを使いたくなったことも...。
The word is only a representation of the meaning: even at its best, writing almost always falls short of full meaning. Given that, why in God’s name would you want to make things worse by choosing a word which is only cousin to the one you really want to use?
●感想 Box 21が「ヨーロッパで爆発的に売れたスウェーデンの犯罪小説」と聞いていたので、The Girl With the Dragon Tattoo とThe Girl Who Played With Fireファンの私は発売前に読ませていただくチャンスに即座に飛びつきました。 けれども、残念なことにBox 21はThe Girl...シリーズには遥かに及ばない作品でした。 バルト諸国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の若い女性を「よい仕事がある」と騙してリクルートし、他国に連れてゆき性奴隷として人身売買する犯罪は欧州で問題になっています。その深刻な社会問題を取り上げていることと、騙されて虐待されている被害者なのに社会から娼婦として蔑まれるだけで保護されない悲惨な立場の彼女たちの視点を描いたことには好感をいだきます。けれども、文章力におおいに問題があると感じました。
著者のBeth Maloneyはハリウッドの映画界で活躍する弁護士だったが、離婚後3人の息子と東海岸のメイン州に引っ越す。離婚の辛さから回復し、虐待あるいは放任された未成年者のguardian ad litem(訴訟後見人)の仕事に情熱を抱くBethはようやく念願の自宅を購入した。だが、ビーチ沿いの借家から持ち家に引っ越したときから、健康で優等生だった12歳の真ん中の息子Sammyが突然奇妙な行動を取るようになる。
「PANDAS:Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorders Associated with Streptococcal Infections 連鎖球菌性小児自己免疫神経精神障害」という耳慣れない疾病は、National Institute of Mental Health(米国立精神衛生研究所)のSwedoらが2006年に研究発表した概念です。
画家のBasil Hallwardは、若くて美しく裕福なDorian Grayに出会い、これまでにない情熱にかられて肖像画を描く。その肖像画はこれまでの最高傑作だったが、BasilはDorianへの思いを表現しすぎている肖像画を展示することを拒否し、Dorian本人に贈る。 Basilの友人で皮肉なウィットに富んだLord Henryに出会ったDorianは、瞬く間に彼の影響を受ける。これまで自分の美とその影響力を知らず、単純でイノセントだったDorianは、Lord Henryに出会ったおかげで将来老いて醜くなった自分に失った若さと美を見せつけるであろう肖像画を恨む。そして、自分がこの若さを保つことができ、かわりに老いるのがこの肖像画であってくれるなら何でも与えると願う。 ("How sad it is! I shall grow old, and horrid, and dreadful. But this picture will remain always young. It will never be older than this particular day of June. . . . If it was only the other way! If it was I who were to be always young, and the picture that were to grow old! For this--for this--I would give everything! Yes, there is nothing in the whole world I would not give!")
“It is in the brain and the brain only, that the great sins of the world take place also.” “I choose my friends for their good looks, my acquaintances for their good characters, and my enemies for their good intellects. A man cannot be too careful in the choice of his enemies. I have not got one who is a fool.” “I never approve, or disapprove, of anything now. It is an absurd attitude to take towards life. We are not sent into the world to air our moral prejudices.” " . . . there is only one thing in the world worse than being talked about, and that is not being talked about."
“My dear boy, no woman is a genius. Women are a decorative sex. They never have anything to say, but they say it charmingly. Women represent the triumph of matter over mind, just as men represent the triumph of mind over morals.”
Lord Henryがめちゃくちゃにこき下ろしているだけでなく、知性のある女性はまったく登場してきません。というか、登場する男性もLord Henryを含めてみんな浅はかなんで、「あんたにそんなこと言われたくないよ」って感じですが。それと、以前ご紹介したThe Awakeningがちょうどこの時代の作品なんですよね。英国と米国の差、男女の視点の差などを比べてみると、なかなか感慨深いところがあります。
怖い本じゃないのですが、ディズニーのIt’s a Small Worldのアトラクションが重要なシーンになっていて、これが私には悪夢を見るほど怖かったのです。というのは、私はディズニーのほんもののIt’s a Small Worldの途中で恐怖心がじわじわわき起こり、逃げ出したくなるのですよ。怖いくせに3度か4度入ったことがあり、この本での描写がそのときの感覚を呼び起こして読後に嫌な夢をみちゃいました。作者のBrayもこの本に使うということはある程度不気味だと思ったのでしょうね。
でも、娘に The Secret Garden, A Little Princess, Heidi, Anne of Green Gables を小学生のときに買ってやったのに、全然読んでくれないのですよ! もったいないから自分で読み直しましたところ、昔の懐かしい思い出がよみがえるだけでなく、新たに理解できたところがあり、想像したよりも楽しめました。 娘にウケなかったのは、「未知の世界に憧れる」ような環境で育っていないからかもしれません。恵まれた環境はかえって想像力には良くないのかなぁ。
これらのクラシックは子供用ですし、あらすじを知っているから英語でも読みやすいと思います(特にAnne of Green Gablesの英語は読みやすいです)。 ぜひぜひお試しください。
Beach Readsの定義はAbout.comによると、「 A good beach book is engaging and a quick enough read that you can finish most of it on the beach before your sunscreen wears off. A beach book isn't necessarily literature, but a beach book will entertain.」だそうです。 つまり、ビーチで寝転んで軽く読み切るための、とっつきやすくてあまり脳みそパワーを使わずにすむ本。そして、読み終えたら心置きなく置き去りにできる本です。だからBeach Readsというと男性の場合はミステリー、女性の場合はロマンスが多かったりします。 でもそのBeach Readの中で明らかに「Beach Readにどうぞ!」とマーケティングしているのが先日ご紹介したような本の数々です。
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