Anders Roslund, Borge Hellstrom
400ページ
Farrar, Straus and Giroux
2009年10月13日発売予定
犯罪小説/ミステリー・スリラー
スウェーデンの首都ストックホルムのアパートから瀕死になった若いリトアニア人娼婦が救出される。娼婦を殴り鞭で打ったのはロシア人のヒモ(ポン引き?)であったが、外交領域を主張するためにスウェーデン警察が罪に問うことはできなかった。
その事件を担当することになったベテラン刑事Ewert Grensは、25年前に起こった事件の悲嘆を引きずって暗澹たる人生を送っていた。同僚の警官だった妻がJochum Langという犯罪者のために脳外傷を受け、意思疎通ができない状態になってしまったのだ。
事件以来気難しくなり孤立したEwertが唯一友情を保っているのはBendt Nordwallとその妻のLenaだけだった。そして職場でなんとか良好な関係を保っているのはSvenという若い理想家の刑事のみである。
病院に運ばれた娼婦は3年前にリトアニアで「よい仕事がある」と騙されて売りとばされ、スウェーデンに送り込まれた未成年のLydia Grajauskasだった。電子錠のかかったアパートの一室に閉じ込められ、逃げることもできず、反抗すると徹底的に肉体を痛めつけられる。性奴隷として地獄のような生活を送ってきたLydiaが、ついにポン引きのDimitriを異常に怒らせるほど反抗したのには理由があった。Lydiaは治療を受けていた病院で医師たちを人質にしてある要求をする。
Lydiaの「真実」は、Ewert, Bendt, Sven3人の刑事の「真の姿」を暴くものでもあった。
実際に欧州で深刻な問題であるhuman trafficking(人身売買)を題材にした問題作で、スウェーデン推理小説アカデミー最優秀犯罪小説賞ノミネート作。
●感想
Box 21が「ヨーロッパで爆発的に売れたスウェーデンの犯罪小説」と聞いていたので、The Girl With the Dragon Tattoo とThe Girl Who Played With Fireファンの私は発売前に読ませていただくチャンスに即座に飛びつきました。
けれども、残念なことにBox 21はThe Girl...シリーズには遥かに及ばない作品でした。
バルト諸国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の若い女性を「よい仕事がある」と騙してリクルートし、他国に連れてゆき性奴隷として人身売買する犯罪は欧州で問題になっています。その深刻な社会問題を取り上げていることと、騙されて虐待されている被害者なのに社会から娼婦として蔑まれるだけで保護されない悲惨な立場の彼女たちの視点を描いたことには好感をいだきます。けれども、文章力におおいに問題があると感じました。
私は簡潔かつ詩的な文章のファンですが、Box 21の文章は単にぶつ切りなだけ。またサブプロットがバラバラに進行している感じで、最後になってもひとつにまとまる感じがありません。
また、登場人物が二面的です。善人にも悪人にも深みがなく、従って感情移入ができないのには困りました。
そしてセットアップに時間をかけたわりには、重要なもりあがりの部分が説明不足です。
最後に「驚きの結末」が用意されていますが、予想できるうえに子供だまし的です。心理的に辻褄が合わないと私は感じました。
けれども、 The Girl With the Dragon Tattooのレベルを期待しなければ、ペースの早い犯罪小説として楽しめるかと思います。傑作になるための要素は全部揃っていますし、読者の感想を読むと、実際にけっこう好きな人が多いようですから。
●読みやすさ ★★★☆☆
難しい判定です。というのは英語そのものは簡単なのですが、場面がブツ切れで移り変わるので状況を把握しにくいのです。読みやすいくせに読みにくい可能性のある本です。
●アダルト度 ★★★★☆
性的虐待と暴力の場面があります。ドライに書いていますが、目を背けたくなる感じです。
コメント
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