著者:Elizabeth Rosner
出版年:2001年
純文学
静かで美しく、心が癒される物語を読みたい方におすすめ
ポーラとジュリアンの兄妹は、ホロコーストの過酷な体験から抜け出せない父親に育てられた。優れた声楽の才能を持つポーラは、住み込みでレッスンをしていたために父親の影響を逃れることができたが、ひとり残されたジュリアンは成人した今もひきこもり状態になっている。ポーラはプロの声楽家をめざしてヨーロッパでオーディションを受けることを決め、留守のあいだ掃除婦のソーラにジュリアンの世話を頼む。
いっぽう掃除婦のソーラは、故国で政府軍が家族と村の住民全員を皆殺しにしたのを目撃し、たったひとりの生き残りとして罪悪感を抱いている。「生存者の罪悪感」の犠牲となり、幸福になれないジュリアンとソーラが、とまどいながらも寄り添ってゆく。傷ついた魂が未来に向かって生まれ変わろうとする過程を、詩人のRosnerがリリカルな文章で美しく描く。
邦訳版も早川書房から「光の軌跡」として出版されているようですが、残念なことにすでに廃刊になっているようです。
●ここが魅力!
詩人が書いただけあって、文章が詩情豊かです。
登場人物の悲劇と繊細な心の揺れ動きにいつのまにか引き込まれ、読後にも彼らを長く忘れることができないでしょう。
私は2001年にAdvance Reader's Copyをいただいて読みましたが、その後も何度も読み直したくなる本です。この本を貸した友人たちからも「ブッククラブで取り上げたい」といった反応を得ています。
●読みやすさ ★★☆☆☆
決して難しい単語を使っているわけではありませんが、詩的な文体なので状況をつかみにくいかもしれません。
語り手がジュリアン、ソーラ、ポーラの3人の間で突然切り替わるのでそれに混乱を覚えるかもしれません。けれども語り手によりフォントが異なりますので、慣れれば混乱は減るでしょう。
●これが気に入った方にはこんな本も。。。
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