作者:Charlotte Brontë
1847年刊
ジャンル:英国文学/クラシック/ロマンス/ゴシックロマンス
孤児のJaneは叔母や従兄から虐待され、10歳で慈善施設の学校Lowoodに送り込まれる。Lowoodで慢性的な餓えと学校の管理者による不条理な抑圧に耐える8年を過ごしたJaneは、外の世界を夢見て家庭教師の個人広告を新聞に載せる。
Janeが見つけたのは、Thornfield屋敷の主Mr. Rochesterが元愛人のフランス人オペラ歌手から引き取った少女の家庭教師の職だった。Mr. RochesterはJaneの2倍ほど年上で容貌は醜く毒舌だ。しかもときおり暗い気分になり他人を寄せ付けない。けれども、JaneとRochesterは互いだけが理解し合える知性や真摯さに惹かれる。
友情が恋愛感情に変わる兆しが見えたとき、心をかき乱す出来事が次々と起こる。夜中に不気味な笑い声が響き、誰かが眠るRochesterのベッドに火をつける。そしてJaneに秘密を打ち明けないRochesterは他の女性と結婚することをほのめかす。
●読みやすさ ★★☆☆☆
まず、クラシックは現代の小説に比べて読みにくい、ということをご承知ください。
けれども、これはクラシックな文芸作品のなかでは、もっとも読みやすい小説のひとつです。第一人称であることと、物語があちこちに飛ばないことが読みやすさに繋がっています。
"presentiment", "effervesce"といった18世紀、19世紀特有の表現にときどき出くわすのとフランス語やドイツ語の会話が英語で説明されていないことに戸惑うかもしれませんが、だいたいの意味が想像できれば飛ばしても大丈夫です。
文章としては簡潔で現代の文法とあまり変わりません。Janeに感情移入もしやすいので、退屈することなく読み進むことができます。ふつうは「会話が多いと読みやすい」というのが常識ですが、この本では会話の部分のほうが(まわりくどくて)わかりにくいようです。でも、JaneとRochesterの会話が醍醐味ですから、他を飛ばしても、そこだけはじっくり読んでくださいね。
●ここが魅力!
まずヒロインの個性。栄養失調で成長が止まり子供のような体型で平凡な顔立ち(plainと表現されている)のジェインは、どんなにつらい環境下でも他人の影響を退け、「自分らしさ」を失わないよう内面の戦いを続けます。常に「私はどういう人間なのか、どんな生き方をしたいのか」と問いかけるジェインは、彼女の倍の年齢のロチェスターよりもはるかに芯の強い人間として描かれています。異なる階級間の愛情が結婚にはつながらないのが常識で女性には対等の人権がなかった19世紀半ばに、こんなヒロインとロマンスを作り上げたシャーロット・ブロンテには脱帽です。
ヒロインだけでなく、ヒーローのロチェスターもこの時代には珍しいキャラクター。
二人の運命は永遠に引き裂かれるのかどうか、はらはらしながら読み進めるうちに英語で読んでいることすら忘れて目頭を熱くすることでしょう。
最初の3分の1、ロチェスターに出会うまでの部分は緩慢に感じるかもしれませんが、作者自身が慈善施設や家庭教師の体験をしていることを知って読むと、この部分も興味深く読むことができます。
●アダルト度 ★★☆☆☆
中・高校生以上向け。
私が始めてこの本に触れたのは小学校低学年のときで、「少年少女世界の名作文学」に載っていたものですが、ちっとも意味がわかりませんでした。ラブシーンはキス程度で非常にプラトニックで、そこが良いところです。でも、この本のよさを理解するためには多少の人生経験が必要かと思います。
●この本を楽しんだ方にはこんな本も……
「Rebecca」 by Daphne Du Maurier
「Pride and Prejudice」 by Jane Austen
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