著者:Jonathan Stroud
ハードカバー: 384ページ
出版社: Hyperion Book CH
ISBN-10: 1423164911
発売日: 2013/9/17
適正年齢:PG8(小学校3年生以上)/小学校高学年から中学生をターゲットにしている
難易度:中級レベル(文章はシンプルでストーリーは理解しやすいが、中級レベルには難しい表現もある)
ジャンル:ファンタジー(ホラー)/ミステリ
キーワード:幽霊、超常現象、冒険、忠誠心、友情
2013年これを読まずして年は越せないで賞候補(渡辺推薦)、あるいは2014年に持ち越し?
ヴィクトリア朝を思わせるロンドンで、50年ほど前から恨みを抱いて死んだ者の霊が現れて人々を襲い、殺害する事件が増えてきていた。事件があまりにも蔓延したために生まれたのが幽霊を駆除するビジネスだった。
このビジネスには生まれつきの霊感が必要であり、特に若いときにその能力が強い。だが、駆除にはスキルが必要である。霊感がある子は会社に入社して年長の経験者の指導のもとにトレーニングを積むのが習わしなのだが、あまりにも危険な仕事のため、成人するまで生き延びる者は少なかった。
Lucyはようやくのことで仕事を見つけるが、その会社Lockwood & Co.の主は、自分とそう歳が変わらない少年Anthony Lockwoodだった。Lockwoodの唯一のアソシエイトGeorgeも含めて3人全員が子供である。そんな会社を信用する大人は少ない。仕事で火災を起こして多額の賠償金を求められたLockwoodたちは破産の危機に直面する。そこにやってきたのが、大金持ちからの興味深い依頼だった。Lockwoodは興味をそそられるが、命を落とす可能性が高い仕事にLucyとGeorgeは躊躇する。
児童書ファンタジーの傑作Bartimaeusの作者による最新シリーズLockwood & Co.の第1巻である。
そろそろ吸血鬼、ゾンビ、狼人間、ディストピアには飽きてきたので、幽霊ものが新鮮に感じる。しかも、ただの幽霊ではない。幽霊から触られるghost touchは致命的になりかねないのである。使う道具にもいろいろあり、戦略も必要だ。この辺りがBartimaeusのときの魔法に共通しているところで、あのスリルも蘇る。殺人ミステリの要素が含まれているのも魅力である。
小学校高学年から中学生が対象の児童書だが、死と隣合わせのダークな内容で、ハリー・ポッターを連想させるところがある。読者層もハリー・ポッターと重なるが、Jonathan Stroudの文章のほうがJ.K. Rowlingよりずっと優れているし、ユーモアのセンスも洗練されている。
登場人物たちも魅力的だ。天才的だがやや自信過剰でときおり自己中心的なLockwoodは、少年版シャーロック・ホームズのようだ。悲観的でいじけやすいGeorgeと才能があるのに自信がゆらぐ主人公のLucyの不協和音も面白く、この3人の魅力がシリーズを読み続けたくなる要素になっている。
5月末にニューヨークで作者Stroudに会い、思わず「私、Bartimaeusがすっごく好きなんですっ!」とキャピキャピ発言してしまったのだが、にっこり笑って「Me too!」と言ってくれた。当時まだ執筆中だった拙著『洋書ベスト500』にBartimaeusを選んだことを伝えると、ARCに"Thank you!"と書いてくれ、ニコニコマークつきのサインをしてくれた。高飛車な作家もいるが、Stroudはすごく気さくで、ますますファンになったのである。
Johnnycakeさま
そうなんです!でも、LockwoodはNathanielより好感が抱けるタイプなんですよ。ジコチューなところはあるけれども、最終的にはちゃんと思いやりがあるというところが違いかもしれないです。
ユーモアのセンスはBartimaeusのほうが上なんですけれど、それも、これからもっと発揮されることを楽しみにしています。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2013/11/01 09:02
おお、バーティミアスファンとしては、見逃せませんね。既にこのLockwoodがナサニエルと、ルーシーがキティと重なってます。^^;
投稿情報: JohnnycakeACT | 2013/11/01 08:18