Jonathan Stroud
ペーパーバック
出版社: Disney Hyperion
ISBN-10: 1423136829
ISBN-13: 978-1423136828
一部の初刊発売年:2003年
児童書(小学校高学年から中学生)、だが大人も楽しめる/ファンタジー/魔法、魔物
三部作の一部『The Amulet of Samarkand』
三部作box set
大英帝国は魔術師と一般市民の二つの階級に分かれていた。
支配層の魔術師たちは富と権力を独占していたが、彼らの間でも権力争いが盛んだった。
多くの魔術師同様、Nathanielも5歳のときに親から売却されて魔術師の師匠夫妻に育てられた。凡庸な魔術師のArthur Underwoodは弟子の天賦の才能に気づかないし、興味も抱かない。しかも、残酷で冷たい性格である。
独学で高度な知識と技術を身につけた12歳のNathanielは、大人の魔術師にも危険なdjinni(イスラム神話の精霊だが、日本語だと「魔物」という表現のほうが近いと思う)の呼び出し(summon)を行う。
Nathanielが呼び出したのは、5000歳の中レベルdjinniのBartimaeusだった。彼はLovelaceからAmulet of Samarkandと呼ばれる魔除けを盗むようBartimaeusに命じるが、それがどれほど危険なことなのかまったく想像もしていなかった。Bartimaeusは生意気な少年魔術師に苛立ちながらも、呼び出された魔物の宿命に甘んじ、自分のプライドを押し殺してNathanielを助ける。
2003年に英国で出版されて以来、国際的なベストセラーになった児童書三部作。
ハリー・ポッターとよく比較されるが、内容はまったく異なる。
●ここが魅力!
小学生向けの児童書だと描けるダークさやユーモアに限界がありますので、本好きの子供たちが小学校高学年になると物足らなさを感じるようになります。けれどもYA(ヤングアダルト)は性的なコンテンツが多すぎて小学校高学年から中学生には不向きです。
ハリー・ポッターのように大人でも楽しめるような内容で、しかも性的な表現がほとんどないファンタジーとなると、本当に数が少なくなってしまいます。
Bartimaeusは、このカテゴリーに属する貴重なファンタジーなので、少々古い作品ですがご紹介することにしました。
この三部作の魅力は、ダークさとユーモアが共存していることです。
邦訳もされているのでそちらを読んでいる方が多いのですが、Bartimaeusの語り口の可笑しさを邦訳するのは難しいと思いますので、できれば英語で読んでいただきたい本です。
少年魔術師のNathanielはあまり好感が抱ける人物ではありません。そのために本書を好きになれない読者もいるようですが、あくまでBartimaeusが主役なのです。それを忘れないように読み続ければ、Nathanielのとらえ方も変わってくると思います。
そして、三部作の最後にはNathanielにも心動かされている自分に驚くことでしょう。
●読みやすさ 読みやすい
ネイティブでは小学校高学年の読書レベルなので、日本人の大人にとって読みやすいと思います。
Bartimaeusが一人称で語る部分と、NathanielとKitty(後に重要になる登場人物)の視点が三人称で語られる部分とがありますが、いずれにしても複雑な解釈を要する表現はありません。
老眼が進んでいる私はオーディオブックで読みましたが、ナレーターが非常に良かったので、リスニングのほうが好きな方はそちらをおすすめします。Audibleの会員になれば、廉価で読めるようになります。
●おすすめの年齢 小学校高学年から大人まで
ダークで残酷な部分もありますが、ハリー・ポッターよりは暗さが少ないです。
Johnnycakeさん、
そうなんですよ!毒舌。そこが魅力。
児童書なのに大人が楽しめますよね!
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2012/08/25 18:54
ああ、Bartimaeusですね!これはBartimaeusの毒舌とNathanielの成長との微妙な関係が好きでした。あと、3巻に出てくるPtolemyとの絡みもいいなぁ、と。
>三部作の最後にはNathanielにも心動かされている自分に驚くことでしょう。
心動かされました~。^^;
このシリーズは脚注がまたおもしろいですよね。
スピンオフのRing of Solomonも読みましたが、やはりNathanielが登場しないとイマイチBartimaeusの毒舌も勢いがないような気がしました。
投稿情報: Johnnycake | 2012/08/22 17:36