2010年5月6日の株価急落(Flash Crash、フラッシュ・クラッシュ)の直後、一躍注目されたのがHFT(High Frequency Trading、ハイフリークエンシートレーディング、超高速・高頻度取引)だった。HFTは高速処理ができるコンピュータを使ってミリセカンドとかマイクロセカンドといった想像を絶する高速で取引するもので、株式が乱高下する原因になっていると言われていた。
だが、マイケル・ルイスの新作『Flash Boys』が発売され、CBSの60 Minutes,Daily Show with Jon Stewart, Charlie Roseなどのテレビ番組に出演するようになって状況はガラリと変わった。ルイスには難しい経済や数字の話題をとてもわかりやすく説明する天賦の才能があるから、「HFTってそういうものだったのか!もっと知りたい」と素人まで興味を抱いたのだ。
The Tipping Point
, Blink
,Outliers
といった話題作を次々と生み出してきたマルコム・グラッドウェルの最新作は、旧約聖書の有名な逸話「ダビデとゴリアテ(David and Goliath)の闘い」をテーマにしている。誰もが怖れるペリシテの巨人兵士ゴリアテをイスラエルの羊飼いの少年ダビデが石で打ち負かしたストーリーは、不利な条件の弱者が恵まれた条件の強者を破ることの例えによく使われている。
副題:Obama and the Clintons, McCain and Palin, and the Race of a Lifetime John Heilemann、 Mark Halperin 464ページ(ハードカバー) Harper 2010/1/11 政治/時事/ノンフィクション
発売日にアマゾンで在庫切れになるほど話題になったGame Changeは、ベテラン政治ジャーナリストのJohn Heilemann(New York Magazineの政治コラムニスト。これまでthe New Yorker, Wired, The Economistなどのライターを務めた)とMark Halperin(Timeマガジンの編集長でシニア政治アナリスト)の2人が書いた2008年大統領選挙の裏舞台ドラマのダイジェスト版である。
昔は私もよくプレゼンをしましたし、外資系の会社に勤務しているころは英語のプレゼンや講演の通訳もやりました。だからダメなプレゼンがどんなものかは熟知していると言っても過言ではありません。最悪なプレゼンは聴衆を無視した自己満足なものです。ジョブズは、プレゼンテーションとはロックコンサートや演劇のパフォーマンスのようなものであり、「お客様」に「素晴らしい体験」をしていただくことが大切なのだと自覚しています。「Your Audience wants to be informed, educated, and entertained」とGalloが説明するように、聴衆は、製品の情報だけでなく、なんらかの学びと楽しい体験を期待しているのです。
ジョブズはプレゼンを古典文学のように3つのAct(劇の幕)に分けています。起承転結という感じですね。そこでGalloも本書を3つのActに分けています。 1幕の「Create the Story」では、まず製品に関する、観客を虜にするようなエキサイティングなストーリーを作り上げる方法を説いています。 2幕の「Deliver the Experience」は製品の実際の内容や使い方を説明する方法ですが、ただ説明するのではなく、観客に「これが欲しい」いや「持たねばならぬ」と思いこませるような体験を与える方法です。 3幕の「Refine and Rehearse」は演出と練習です。演劇を少しでもやったことがある方ならピンとくるでしょうが、単純に見えるシーンの背後には綿密なプランと練習があります。ここでは、衣装からボディランゲージ、声の調子など細部の演出について説明しています。
難しい言葉を使って語ろうと思えばいくらでもそうできる複雑な内容を、非常にシンプルな言葉(ジョブズもそう)でシンプルに説明しているところが最大の魅力です。私が気に入ったフレーズの一例は’ Deliver a “holy shit” moment’ 。この一言で多くのことがいっぺんに理解できてしまいますよね。それから‘Sell dreams, not products‘というフレーズなんかも。優れたコミュニケーションがどういうものであるかをGallo自身が実践しているわけですね。
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