アメリカではYA(ヤングアダルト)のジャンルでヒット作が続いており、近年のBEAでも大手出版社が力を入れているのが目立ちます。その中でも新しい試みが、老舗Macmillan(マクミラン)出版社の「Sw♥♥on Reads」です。
Sw♥♥on Readsは、14歳以上のティーンを対象にしたロマンス小説の部門で、マクミランの児童書部門のひとつです。そういう部門はまったく珍しくありません。けれども、Sw♥♥on Readsは、ネットを利用し、クラウドソーシングで読者に編集アシスタントをやらせて出版する本を決めるところがユニークなのです。
Sw♥♥on Readsでは、小説を出版したい作家(プロ、アマ無関係)が作品をサイトに投稿し、登録したメンバーが作品を無料で読んで評価します。そして、一定数の読者が高い評価をした作品をSw♥♥on Readsの編集者が読み、「出版に値する作品だ」と評価したら紙媒体と電子書籍の両方で出版されるという流れです。
Twilight, The Hunger Games, Divergent(そして今年はThe Fault in Our Stars)
2)視聴者参加型のテレビ番組の流行
America’s Got Talentや、The Voiceなど、視聴者の投票(vote)で結果が決まる番組の人気が高い。
ネット時代の視聴者は、自分の意見を反映してくれるものを好む。
3)FanFic(ファンフィクション、二次創作)出身の作家による大ヒット
ファンが勝手に書くFanFicは大手出版社から軽視されていたが、FanFicで非常に人気があったCassandra Clareは、現在ではYAファンタジーの大作家になっている。また、全世界にエロチカブームを引き起こしたFifty Shades of Grey も、元々はTwilightのFanFicだった。FanFicでは、読者が作品を評価し、それが見えるようになっている。だから、最近ではFanFicのサイトで新しい作家を探す出版社もある。Sw♥♥on Readsの手法は、FanFicのサイトを洗練させたような感じ。
Sw♥♥on Readsの仕掛け人を見ると、マクミランが本気で取り組んでいることがわかります。創始者のJean Feiwelは、児童書分野での大手Scholastic社で20年活躍したベテランで、Babysitters Club, Goosebumps, the Magic School Busという大人気シリーズを作り上げ、 Harry Potterの米国での出版の初期にも関わっています。
現時点では「すごい!」という感覚はありませんし、大成功はしていません。けれども、視聴者参加型の番組のように、最初のうちはレベルが低くても、人気が出てくると実力がある作家が登場してくるようになると思います。ですから、注意して成り行きを見守って行くつもりです。
また、登録すれば無料で沢山のYAロマンスが読めますから、出費を抑えて多読したい洋書ファンの方にはとってもお薦めです。
***
ところで、作品そのものはどうでしょうか?
BEAで今年8月発売予定のA Little Something Differentの著者に会い、サイン本をいただきました。
ペーパーバック: 224ページ
ISBN-10: 1250061458
発売日: 2014/8/26
ジャンル:YAロマンス/青春小説
適正年齢:PG10(大学生のロマンスだが、非常にプラトニック)
難易度:中級
とてもシャイな男子大学生と女子大学生が出会って惹かれ合うのですが、どちらも自分からはアプローチしません。その二人のまだるっこしさを、大学教授、ルームメイト、友人、兄、バスの運転手、食堂のウエイトレス、公園のリスの視点で描いたものです。特にすごい仕掛けがある作品ではないのですが、最近のどキツイ作品にはないキュートさが受けたのではないかと思います。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。