著者:Barbara Ross
マスマーケット: 378ページ
出版社: Kensington Pub Corp (Mm)
ISBN-10: 0758286856
発売日: 2013/9/3
適正年齢:PG12(中学生以上。性的表現はキス程度)
難易度:中級レベル(コージーミステリなので簡単)
ジャンル:コージーミステリ
キーワード:メイン州、New England clambake(ニューイングランド式クラムベイク)、殺人、ロマンス
賞:アガサ賞候補(現時点ではまだ決定していない)
舞台は、アメリカ東北部「ニューイングランド地方(New England)」最北端のメイン州湾岸沿いの町。
メイン州の夏は短いが、シーズン中は美しい海岸沿いの風景とロブスターやクラムといったニューイングランド名産物のシーフードを求める観光客で賑わう。
主人公Juliaの父が始めた「Snowden Family Clambake Company」は、観光客に船で景観を楽しませた後、母の家族が3代にわたって所有している小さな島に連れて行き、そこで伝統的なClambakeをするツアーを提供している。ホテル、漁業、アルバイトでの収入...など、Juliaだけでなく町にとって重要な産業でもある。
ところが、父が亡くなり、妹と妹の伴侶が事業をついでから経営は泥沼に陥った。大学進学で町を離れ、ニューヨーク市の投資会社で活躍していたJuliaは、妹から助けを求める電話を受けて故郷に戻った。
銀行からの執拗な催促と母親が家族から受け継いだ島を失うストレスに耐えながら、Juliaは自分で犯人を見つけようと思う。
著者はこの作品でデビューした新人で、この作品は、コージーミステリを対象にした「アガサ賞」の候補になっている。コージーミステリだから、気分が悪くなるような描写もないし、セックスシーンもない。とてもクリーンな作品である。
Juliaは30歳という年齢にしてはスレていなくて好感が抱けるヒロインである。また、コージーミステリでは重要な脇役たちもメイン州らしくていい。また、ニューイングランド式チャウダーやブルーベリーのデザート(grunt)など、本書に登場する食べ物のレシピが最後に載っているのも楽しい。
私が住んでいるボストン郊外はニューイングランド地方に属しているので、似ているけれども微妙に違うところも面白かった。メインは上の地図のように北で、カナダのケベック州が近い。だから、本書のようにケベックから移住している人もいる。ケベックの公用語はフランス語なので、それも知っておくと本書の登場人物について分かりやすいかと思う。
本格派ミステリに比べると満足感が薄いが、それは私の好みにすぎない。コージーミステリが好きな人は、コージーなところが好きなのだから。その点では良い作品だと思うし、これからファンがついてゆくだろう。
ほのかなロマンスはあるが、この作品ではそれが一番弱い部分かもしれない。
アガサ賞を含む推理小説の重要な賞については、拙著『ジャンル別 洋書ベスト500』をご参照くださいませ。
Shumiさま
忙しくてしばらくブログをチェックしていなかったもので、コメントをすっかり見落としていました。
本当に申し訳ありません。
私はロンドンに住んでいたことがあるので、懐かしいです!
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2014/04/10 15:06
渡辺さん、はじめまして。
イギリスで教育に携わる者です。
メイン州には研究中に行った事があり、
この記事を読んで、当時の事がよみがえりました。
良い本をご紹介されているんですね。
またお邪魔します。
ますますのご活躍を祈念しております。
投稿情報: Shumi Eigo | 2014/04/01 16:28