著者:Marie Rutkoski
ハードカバー: 368ページ
出版社: Farrar Straus & Giroux
ISBN-10: 0374384673
発売日: 2014/3/4(発売前の今なら、お試しより長い1〜5章がキンドルでタダでダウンロードできます)
適正年齢:PG15(高校生以上。性的な話題や強姦未遂シーンはあるけれども、詳細な描写はない)
難易度:中級〜上級レベル(ファンタジーに慣れている人であれば平易)
ジャンル:YAファンタジー/ロマンス
キーワード:戦争、禁断の恋、倫理
シリーズ:The Winner's Trilogy
近隣諸国を次々に侵略して支配下におくValorian帝国のパワフルな将軍のひとり娘Kestrelは、10年前にValorianが侵略したHerraniの国に住んでいる。Kastrelと彼女がつきあっている上流階級の家族は、10年前まではHerrani人の所有物だった豪邸に住み、Herraniたちを奴隷として使っている。
戦いをもっとも高等な文化としてとらえているValorian帝国では、女性は20歳になると兵士になるか結婚するかの選択をしなければならない。17歳のKastrelは戦略には長けていたが、武術は苦手で、人を殺したいとも思わなかった。かといって結婚するつもりにもなれないKastrelは、親友の兄からのアプローチも軽くかわし続けていた。
持ち主に対して反抗的な態度を取る奴隷のArinになぜか惹かれるものを感じるKastrelは、彼に行動と発言の自由を与え、友情も与える。だが、それは、ふたつの国の歴史によって裏切られる運命にあった。Arinから祖国と家族、そして人権を奪った戦争の英雄は、Kastrelの父なのだから。
ファンタジーゆえに架空の国を使っているが、残酷な戦いが復讐を作り出し、復讐がさらに次の復讐を産むという永遠の悪循環は、現実に起こっていることである。本格的なファンタジーに比べると、World building(世界観)や戦略などが物足りないが、YAファンタジーとしてはよくできているほうである。
主人公のKastrelと禁断の恋の相手のArinは、美徳と欠陥の両方を持ち、ときには自己中心的に、ときには、他人や母国の利益のために自分を犠牲にする。賢いのに愚かな過ちをおかすKastrelを疑問に思う読者もいると思うが、恋で判断を誤るのは、ふつうのティーンらしいともいえる。
親の期待に応えようとして努力したり、社会の「常識」が受け入れられずに悩んだり、周囲の人々と共感できなくて苦しんだりするヒロインも、私には好感が抱けた。
ロマンチックな本を読みたいが、薄っぺらすぎるYAファンタジーに飽きている人におすすめである。ただし、三部作の第一部なので、「次、どうなるの?」という部分で終わるのが嫌な人は、三部作が完了するまで待ったほうがいいかもしれない。
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