著者:Brandon Sanderson
ハードカバー: 378ページ
出版社: Tor Books
ISBN-10: 0765320320
発売日: 2013/5/14
適正年齢:PG10(ティーン向けに書かれているが、小学校高学年以上でもOK)
難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)だが、やや難しめ。あるいは易しめの上級レベル
ジャンル:YAファンタジー
キーワード:魔術(Calkling, rithmatist)、alternative universe (alternate universe, alternate reality)バトル、成長物語
よくあるYAファンタジーのように、実際の世界とはやや異なる世界(alternative universe)が舞台。
この世界には、Rithmatistという特殊な職種があり、彼らはチョークで描いた2次元の絵Chalklingsに命を吹き込むことができると同時に、それらを防御する図を描く術も持っていた。野生化したWild-Chalklingsは凶暴であり、人間は瞬く間に殺すことができる。それらから国民を守ることができるのはRithmatistsだけだった。
16歳のJoelの夢はRithmatistになることだが、8歳のときの特別な儀式でthe Masterに選ばれた者しかなることができない。父親の急死が重なって儀式を逃したJoelにとっては、どれほど努力しても達成不可能な夢だった。
チョーク職人の息子でしかないJoelは、亡くなった父を知る学長の配慮で、由緒あるArmedius Academyで学費免除の奨学生として学んでいた。学校で掃除婦をしている母は、Joelが高等教育を得て労働者階級を抜け出すことを望んでいるが、JoelはRithmatistになる夢を捨てられないでいる。
Armedius Academyの中でもRithmatistになるトレーニングをしている学生は特別扱いされていた。その中でも特に優秀な学生たちが次々と姿を消す事件が起こっていた。時を同じくして、Rithmatistの若き英雄が人望の厚い老教授をRithmaticの決闘で倒して、教授の座を乗っ取った。Joelは降格したFitch教授のもとでアシスタントの仕事を得ることに成功し、劣等生として補修に来た風変わりなRithmaticの女子学生Melodyと仲良くなる。
そして、Rithmaticの学生たちが姿を消している謎を解こうとする。
Brandon Sandersonがつくり上げる魔法はいつもユニークで楽しみなのだが、チョークでラインを作って防御と攻撃をするというRithmaticの発想が、児童書として特に魅力的だと思った。
本には左のようなイラストがいくつもあり、duel(決闘)が想像しやすくなっている。そのうち、自分でも描いてみたくなってくる。私は子供の頃に校庭で「まるかき」という遊びをよくやったのだが、単純な円をつなげることのストラテジーが面白かった。私がまだ小学生だったら、きっとRithmaticのまね事をやっていただろうと思う。
Sandersonの大人向けのファンタジーは、The Final Empier三部作のように、面白いのだが、ともかく長い。
だから、よほどファンタジー好きでないと手に取るのを躊躇するだろう。その点、YAファンタジーの本書や中編のThe Emperor's SoulはSandersonを試してみるのにちょうどよい。
下は、拙著『洋書ベスト500』の発売を記念して、著者にサインしてもらったもの。
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