Rebecca Skloot
ハードカバー: 384 ページ
出版社: Crown
ISBN-10: 1400052173
ISBN-13: 978-1400052172
発売日:2010年2月2日
ノンフィクション/科学、医療ルポ/歴史/伝記
シドリー・リンガーが19世紀にカエルの心臓の培養に成功して以来、ニワトリやマウスなどさまざまな動物の細胞培養が行われてきたが、ヒト由来の細胞に限っては長期的に培養し続けることが不可能だった。
1951年に世界で初めてヒト由来の細胞の培養に成功したのが、ジョンズホプキンス病院のGeorge Gey(ジョージ・ゲイ)である。Henrietta Lacks(ヘンリエッタ・ラックス)という黒人女性が子宮頸癌で亡くなる前に患部から取り出された細胞は、これまでの細胞のように死ぬことはなく、旺盛に分裂を続けていったのである。
本書は、HeLa細胞と研究者、Henriettaと家族の人生、著者と遺族との関わり、という三つのストーリーを交互に語ることで、科学ルポを超えた厚みのあるストーリーになっている。
不死身かつ増殖性が異常に高くて周囲の細胞に紛れ込んで汚染するHeLa細胞は、それだけで興味深い存在である。どこから来たのか?なぜ不死身なのか?それを知るためだけでもこの本を読む価値があるのだが、本書が語るのはそれだけではない。HeLa細胞に関わる人々の人生、医療倫理の変化、アメリカ南部の人種差別の歴史と、現在への影響も語っているのである。
細胞に関する本だが、まるで小説のように読むことができる。
●読みやすさ
研究者ではなく普通の読者を対象にしたものなので、ネイティブ読者レベルのミステリーが読める人であれば、読みにくいとは思わないだろう。
●おすすめの年齢層 中学生以上
ヘンリエッタの家族や周囲の人々の貧困や近親結婚などのテーマがあるので、それが理解でき、受け入れられる精神的成熟度が必要。
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