Maria Semple
ハードカバー: 336ページ
出版社: Little, Brown and Company
ISBN-10: 0316256196
ISBN-13: 978-0316256193
発売日: 2012/12/21
現代小説/風刺小説
Bernadette Foxは、シアトルのマイクロソフトコミュニティのまっただなかにいる主婦である。マイクロソフトの花形プロジェクトを指揮している夫のElgin Branch(アメリカでは専門職を持つ夫婦の別姓が普通)は歴代4番目の視聴率を誇るTEDトークをした著名人で、娘のBeeは保護者のほとんどがマイクロソフトの関係者という私立学校に通っている。
だが、Bernadetteはシアトルもマイクロソフトのコミュニティも毛嫌いしているので、関わりを拒否している。
Bernadetteにとって不運なことに、隣家の主婦はBeeの同級生の母親で、PTAのうるさ方である。自分たちのように熱心にボランティアをせず、嫌がらせにもクールに対応し続けるBernadetteを目の敵にしていて、仲間の母親と悪口を言い合い、新たな嫌がらせの画策に燃える。
それらもBernadetteの苦痛のひとつだが、目下最大の悩みは南極への家族旅行だ。他人との接触を強いられる狭い空間に長期間閉じ込められるのには耐えられないが、愛する娘のBeeの願望なので「行きたくない」とは言えない。ドレイク海峡での船酔いも不安だ。旅行が迫り、切羽詰まった彼女が思いついたのが、旅行寸前に親知らずを4本抜くというプランだった。術後すぐに旅行はできないので恰好の言い訳になる。だが、Bernadetteと彼女を取り巻く人々の卑小な偽りや画策が、突如思いがけない連鎖反応を起こす。
Beeのナレーション、隣家の主婦とその親友でElginに憧れるマイクロソフト社員のEメールのやりとり、Bernadetteとインド在住バーシャル秘書とのEメールのやりとり、といった現代的な手法で物語が進行する。
最初のうち異常な人嫌いのBernadetteに対して「文句ばかり言っていないで、ポジティブに生きればいいのに〜」と批判的な感情を抱かずにはいられないが、後半で「Bernadetteは15年くらい前の私だ」と思うようになった。先日のペルーの旅で出会った10歳年上の女性も、私と同じ頃に同じような苦しい時期を体験していたので、Bernadetteは意外とどこにでもいる女性なのかもしれない。
アジア人への偏見を匂わせる表現や設定もあるけれども、そういったことも含めて現代アメリカの重要な部分を占めているITリッチの文化、苦悩、家族関係、などをじっくり考えさせられる。皮肉な笑いに満ちた軽い小説だが、けっこう深いところがある。
●読みやすさ 普通からやや読みやすい
普通の小説とは異なり、Eメールなどが入り込んでいる風変わりな形式だが、文章はとてもシンプルで分かりやすい。
アメリカに住んだことがない人には、理解しにくい部分があるかもしれないが、それを除けば、とても読みやすい作品である。
●おすすめの年齢層 中学生から高校生以上
性的な話題はあるが、具体的な描写はない。Beeの年齢層(14、15歳)程度から読んでも面白いかもしれないが、軽い笑いの底にある50歳の主婦の苦悩について理解できるのは、たぶん同じような体験をしたその年齢層の女性だけだろう。
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