Melanie Benjamin
ハードカバー: 416ページ
出版社: Delacorte Press
ISBN-10: 0345528670
ISBN-13: 978-0345528674
発売日: 2013/1/15発売予定
歴史小説/航空史
1927年に世界で初めて大西洋単独無着陸飛行を果たしたチャールズ・リンドバーグの名前は誰でも知っているが、妻のアン・モロー・リンドバーグ(Anne Morrow Lindbergh)がどんな人物だったかを知る人はあまりいないだろう。
この小説を読むまでアンのことを知らなかった私は、読み進めるにしたがってチャールズよりもアンに興味を抱くようになった。
だが、チャールズ・リンドバーグが大西洋単独無着陸飛行を果たした頃の世界は、今とは異なる。パリに着陸した瞬間から、彼は普通の人間として生きることが許されなくなったのである。
当時の新聞雑誌の記者は現在のパパラッチに似ており、チャールズは彼らとそれがもたらす熱狂を極端に嫌っていた。
アンがメキシコ駐在大使の父の紹介でチャールズに出会ったのは、彼女がまだスミス大学に通っている頃だった。
教育を重んじる良家のお嬢様だったアンは、美人ではなかったが非常に知的で、しかも勇敢だった。世界が恋をする英雄のチャールズにみそめられたアンは、彼のエキセントリックな行動に違和感を覚えながらも、彼が自分を愛していることを信じきって結婚する。
だが、結婚生活はアンが想像したようなロマンチックなものではなかった。チャールズがアンを妻に選んだ実際の理由はもちろん分からないが、彼の残した言葉からは、アンの血筋の良さが決定要因だったようである。
彼は、アンに自分の達成に貢献する部下、マスコミという敵と戦う同士、優れた子を生む母、生活の面倒を見る秘書、といった役割を求めていたのだが、ロマンチックなパートナーは求めていなかったようである。
チャールズ・リンドバーグは、人工心臓の開発など輝かしい業績を残しているが、第二次世界大戦でナチスドイツを支持するなど、理想的な英雄ではなかった。けれども、それらの汚点は浄化され、今では英雄としての記憶だけが残っている。
だが、パイロットや無線通信士の資格を取って夫の調査飛行に同行したアンは、アメリア・エアハートよりも優れたパイロットだったのに歴史ではチャールズやアメリアと同等には扱われていないのである。
アンは回想録やエッセイで後に有名な作家になったが、満たされない思いを抱いたことは何度もあっただろう。
Alice I Have Beenで証明したように、著者のBenjaminはなかなかのストーリーテラーである。フィクションではあるが、まるで彼らと一緒に過ごしたような気分にさせてくれる。航空史に興味がない人も楽しめるだろう。
●読みやすさ やや読みやすい
アンの視点で書かれているので、表現が簡単で分かりやすく、感情移入をしやすいと思います。
●おすすめの年齢層
性行為を示唆する箇所はありますが、表現はマイルドです。14、15歳以上。
コメント
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