Allen Say
ハードカバー: 63ページ
出版社: Scholastic Press (2011/09)
ISBN-10: 0545176867
ISBN-13: 978-0545176866
発売日: 2011/09
回想録/イラスト本(絵本とは少し異なる)/小学校高学年から大人まで
難しさ:簡単(義務教育で学ぶ英語レベル)
Allen Say(アレン・セイ、日本での名字は清井)は、アメリカで最も尊敬されている児童書イラストレーターのひとりです。
日本ではあまり知られていない存在ですが、彼が生まれ育ったのは日本で、しかも漫画家の野呂新平に弟子入りしていたことがあるのです。
昨年2011年秋に出版されたこの児童書は、Allen Sayが絵を描くようになったいきさつを伝える回想録なのですが、ふつうの回想録とは異なり、イラストや漫画が主人公で、文章はそれらをつなぐ脇役です。古い写真の数々を含め、私のように昭和生まれの人がノスタルジックになれる内容で、大人の洋書初心者にぴったりです。
この本は、父に伴って15歳で渡米するまでのことしか描いていませんが、アメリカに行ってからの彼は父親の命令で陸軍士官学校に入れられ、性格が合わずに反抗して退学になります。軍隊も経験し、紆余曲折を経てついに絵本のイラストレーターとして出版にこぎつけたのは、彼が30代半ばになってからのことでした。
コールデコット賞のオナー賞を取ったThe Boy of the Three-Year Nap でようやくイラストレーターとしての揺るぎない地位を得たのですが、そのときには彼は50歳になっていたのです。
父親や祖母からは絵を描くことを叱られ、周囲の人々からいくら反対されても描き続けたSayは、10代のころに夢見た漫画家にはなれませんでしたが、50歳を過ぎてからアメリカでイラストレーターとして認められたのです。
あきらめずしつこく努力すれば、夢は、自分が予想していたのとは異なる形で、異なる時期にかなったりするものなのですね。私にもそんな体験があります。
ところで、有名な児童作家Lois LowryとSayに関する面白い逸話があります。
1994年にコールデコット賞を受賞したSayとニューベリー賞を受賞したLowryが会ったとき、同じ年齢で、しかも中学生の頃に東京に住んでいたことが分かりました。しかも、渋谷で自転車をこいでいた中学生のLowryのことをSayがみかけて覚えていたのでした。
運命とは、面白いものだと思いませんか?
●読みやすさ 読みやすい
まったくの初心者だと難しいと思うのですが、学校英語で読めるレベルです。わからない単語も1ページに5つくらいは出てくるでしょうが、イラストや写真のおかげでだいたい意味が分かるでしょう。分からないときにはインターネットの英英辞典を利用してみましょう(なるべく英和は使わないほうがいいです)。
●おすすめの年齢層
児童書ですが、どちらかというと大人のほうが楽しめそうです。
子どもと一緒に読むときには、「日本にもこういう時代があったんだよ」と語り合うといいかもしれません。
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