Rosamund Lupton
英国版:ペーパーバック( 384ページ)
出版社: Piatkus Books (2010/09)
米国版:ハードカバー:(336ページ)
出版社: Crown (2011/6/7)
ミステリー/スリラー
ニューヨーク市で働いていた英国人のBeatriceは、妹のTessが行方不明になっているという連絡を受けてロンドンにかけつける。
ふたりは仲が良い姉妹だったが、品行方正なキャリアウーマンとしての生き方を選んだBeatriceと異なり、5才年下のTessは自由奔放だった。美術大学に通っていたTessは大学教授との不倫で妊娠しており、胎児は死んだ弟と同じく嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis)にかかっていた。ロンドンに到着したBeatriceは、Tessが死産をしていたことを他人から聞かされ、ショックを受ける。親密な仲だったと自負していたのに、なぜ妹はそんなに重大なことを伝えてくれなかったのか?
ストーリーは、Beatriceが亡くなった妹にあてて書く手紙の形で進行する。その中で、Beatriceは、裁判の準備として事務弁護士に事件のあらましを最初から説明してゆく。そして、最後に驚きの結末が待っている。
●ここが魅力!
今年読んだ「ミステリー/スリラー」のカテゴリーで、私が最も気に入った作品です。
ベストセラーになるミステリーにはプロット中心で文章にほとんど注意が払われていないものが多く、いつもそれを不服に思っています。
この「Sister」を読み始めてすぐに、簡潔でありながら、非常に美しい文体に魅了されました。次に気に入ったのが、主人公が自分自身の心理分析をしながら登場人物を紡ぎ上げる手法です。そのために、読者は誰が犯人なのか、なかなか分からないのです。それを「ダラダラしている」「冗長だ」と感じる読者がいるようですが、たぶんそれはふだんプロット中心のミステリーを読み慣れている方なのではないでしょうか。私はこのじらし方が、なかなかのものだと思いました。
また、生命倫理、医療倫理、という私が昔から興味を抱いているテーマを扱っているのも、この本が好きな理由のひとつです。終わり方も、普通のミステリーとは異なり、姉妹の深い愛情を思わせる詩的なものでした。表面は静かな「小品」のようなのに、中身はとても贅沢なのです。
本作品は、米国では先月発売されたばかりですが、本国の英国では昨年発行されて話題になったようです。確かに、新人作家とは思えない、非常によくできた作品です。よくある「ミステリー」に飽き飽きしている方に特におすすめです。
●読みやすさ 普通〜やや読みやすい
美しい文章ですが、わざと難しい表現をつかっていないので、読みやすく感じる筈です。
英国人でありながら米国で暮らしているために、イギリス英語とアメリカ英語の違いも出てきます。2つの国で暮らした経験がある私には、そこも面白く感じました。
●おすすめの年齢層
妊娠、セックスという話題はありますが、露骨なシーンはまったくありません。キス程度です。中学生以上。
Monaさん、こんにちは。
楽しんでいただけて、嬉しいです!
ディテールが美しいミステリーっていいですよね。質の良い本に慣れてしまうと、そうでないものが読めなくて苦労しますが(笑)。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2011/11/07 13:14
こんばんは。洋書ファンクラブのヘッドラインでタイトルを見ただけで買って、読み終わるまでリビューを読むのを我慢していたのですが、本当に面白かったです!
細かいディテールも美しかったです。
投稿情報: Mona | 2011/11/06 10:26
こんにちは、Angelさん。
同時期に読んでいたとは、偶然ですね!
私は、アメリカ版のAdvanced Readers' Copyをいただいていたのですが、忙しくてなかなか読めず、ようやく読む機会に恵まれたのでした。
希望と絶望の入りまじった感じ、よくわかります。
とても美しい文章で、余韻が深い作品でした。
本当に読んで良かったと思いました。
投稿情報: 渡辺由佳里 | 2011/07/12 18:36
こんばんは。久しぶりにコメントさせていただきます。昨日ちょうど「Sister」読み終わったところで、そのブログをupしたらお友達が「渡辺さんも読まれてましたよ~。」とお聞きしてさっそくおじゃまさせていただきます。うれしい~。
一英語学習者の私にとってはけっこう難しく感じましたが、渡辺さんの書評を読ませていただいて、自分の感想が間違ったものじゃなかったんだと、ほっとしました。ノンネイティブにとっては、「いったい自分はこれ何パーセント読めているんだろうか?」という不安と隣り合わせで読むことが多いので。でもそれに耐えて読めたときの達成感は何とも言えないです。
この話のラストは、なんとも言えない感覚に襲われました。読んでいて思い出しのはなぜか「ノルウェイの森」のラストシーンです。希望と絶望の入り混じった感じでした。
日本ではちょうどクリスマスシーズンのイギリスのベストセラーとして去年の12月に朝日新聞の「Globe」で紹介されていたので、日本ではすでにPBが入手可能でしたので
PBで購入していました。アメリカのほうが遅いこともあるんだなあと不思議に思いました。その時はKate Mossの本が1位でした。日本って便利なような不便なような?ですね。
投稿情報: angel | 2011/07/12 09:49