というのは、話題性を別にして冷静に本の質を比較すると、Charles and Emmaのほうが遥かに出来の良い本だからです。
これから外出なので、審判の決断やCharles and Emmaのレビューは後ほど(いつになるかな?)アップいたします。(レビューは第二ラウンド前にいたします)
(追記です)
審判のJim Murphyの説明文の大半は「どちらに決めて良いのかわからない」という悩みに費やされています。けれども、最終的に彼がCharles and Emmaを推した理由は私の感じたこととよく似ています。直訳ではありませんが、Murphyが選んだ理由をわかりやすくまとめてみました。(詳しくはこちらをどうぞ)
Claudette Colvinでは、南部の黒人への差別に「バスの席を明け渡さない」という形で抗議した15歳のClaudetteの心境が一人称で語られています。それは成長してからのClaudetteが当時を振り返って語っているものなのですが、若さゆえのいちずな情熱はあるものの、成長してからの深い分析に欠けています。作者のHooseが当時の状況を3人章で補っていますが、この2つの語り手の距離がやや不自然で説得力に欠けるよう感じます。その点、Charles and Emmaは、彼らが遺した手紙や家族の遺した伝記などから実際に彼らが使った言葉を使い、そのうえでCharlesとEmmaを生き生きと描いています。複雑な社会に住む複雑な個人という現実を読者に伝えることができており、その点でこの本を勝者に決めました。
ところで今年は、審判に切り捨てられた作品が決勝戦で蘇るという裏技が取り入れられたようです。去年、読者にダントツ人気で優勝候補のThe Graveyard Bookが第一ラウンドで敗戦するという予想外の出来事が起こったせいかもしれません。自分の応援する作品がたとえ審判に切り捨てられても、決勝で墓場から蘇るよう、Battle of the Kids'BookのThe Undead Pollに投票しましょう!締め切りは14日(日本だと13日)ですから、お早めに。
精神病院のMedfield State Hospitalの跡地など、マサチューセッツ州に分散しているいろいろな場所がマーティン・スコセッシ監督の映画ロケに使われました。また、この本を読んでいるときに、以前にご紹介した写真集「Asylum」(写真右は1例)のことを何度も思い出しました。それらのおかげで、読書中、まるでその場にいるように感じた作品でした。地元の作家ですし、場所の雰囲気が分かるので、それだけでもちょっと得点が上がったかもしれません。
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