1990年、ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館で、レンブラントのThe Storm on the Sea of Galilee(右の写真)ほか300億円に相当する13点の美術品が盗まれた。このとき盗まれた美術品は現在も見つかっておらず、二十世紀最大の未解決アート盗難と言われている。
貧困層のアイルランド系移民が住む南ボストン地域(サウジー)出身の弁護士Finnは、盗難で捕まった下っ端マフィアのDevon Malleyから弁護を依頼されるが、その調査の対象が次々と殺害されてしまう。
その殺害の方法から、ボストン警察は英国に対して独立闘争を行って来たテロ集団のIRA(Irish Republican Army:アイルランド共和軍)のメンバーが関わっていることを疑う。IRAは現在解体状態だが、サウジーのアイリッシュ系マフィアはかつてIRAに協力してきた。当時のFBI(連邦捜査局)がサウジーのマフィアを統括していた”Whitey” Games Bulger (ホワイティ・バルジャー)と懇意になり、重要な情報を流し続けたという過去があるために、ボストン警察はそれ以降FBIを信用しなくなっている。
Devonの14歳の娘に同情して弁護を引き受けたFinnだが、引き受けたときには予想もしなかった危険に巻き込まれてしまう。身の危険が迫っても警察やFBIに援助を求めることはできない状況下で、Finnと同僚の元刑事は盗まれた美術品を単独に探し出そうとする。ガードナー美術館の盗難には元々誰が関わっていたのか?盗まれた美術品はどこにあるのか?
●ここが魅力
私の地元ボストンで実際に起こった未解決のガードナー美術館盗難事件がテーマなので、それだけでも興味しんしんでした。ボストンはイタリア系移民の住む北地域(ノース)とアイルランド系の住む南地域(サウス)が有名で、それぞれにマフィアの縄張りがありました。FBIを利用してライバルのイタリアマフィアを駆逐したホワイティ・バルジャー、マフィアと懇意になっていた悪徳なボストンのFBIなど、 作者が地元の弁護士なのでボストンの雰囲気がよく描けていました。
残念なのは、途中で95%の筋書きが読めてしまい、最後に少し用意された驚きもなんとなく予想できることです。それでもミステリとして十分楽しめましたが。
●読みやすさ ★★★☆☆
多少のスラングはありますが、YAジャンルが読めれば読めるレベルです。
★3つと4つの中間くらいでしょう。
●アダルト度 ★★☆☆☆
レイプされかける場面とかその話題はありますが、実際の場面はなく、性的なシーンはほとんどありません。暴力シーンはありますが、延々と細部を説明することはありません。
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