A.A. Milne
1926年初刊
児童書(幼児から小学生対象)
幼年期の脳の発育にとって最も大切なのは、愛情、安心、年齢に適した刺激だといわれます。親が話しかけてあげるのは、そのうちのすべてを満足させる大切な行為です。愛情や安心を与え、空想の世界を広げるような本を読んであげることもそうです。
A.A.Milneが作り上げたThe Winnie-the-Poohの世界はそれにぴったりです。
いつもぼんやりしていて蜂蜜の誘惑に抗えないPoohと小心者のPiglet、神経質なRabbit、悲観主義のEeyore,世話焼きのお母さんKangaと子供らしいRoo、博識そうで実はちょっとそれが怪しいOwl、そして落ち着きのないTigger(The House at Pooh Cornerで登場)、と現実世界の人々を連想させる多様な住人たちですが、現実世界のように意地悪をしたり傷つけあったりはしません。互いに苛立つことがあっても、仲良しです。起こる出来事や冒険も、Poohが食べ過ぎてRabbitのドアに詰まったり、北極点を発見したりするくらいです。怖いことが起こらない安全な”100 Aker Wood”の中で自由に冒険きるのも幼い子供に適しています。
旧式の英語ですし、礼儀正しくまわりくどい会話や、Poohの詩には大人でもぴんとこないかもしれません。
でも、内容がちゃんとわからなくても、お母さんやお父さんの声を聴くだけで幼児は「愛情と安心」を感じとることができますから、ベッドタイムに本を読み聞かせるのはよいことだそうです(でも、単語を教えようとしたり、一度に長く読みすぎたりして、読書を勉強として扱うと非常に有害になりますからくれぐれもご注意ください)。あくまで、楽しい時間を共有するのが目的です。
これは、私が24歳のときに「将来わが子に読んでやる」ことを夢見てロンドンで購入したThe World of Pooh(Winnie-the-PoohとThe House at Pooh Cornerの2作が含まれている版)です。結婚相手がいないときによくもまあそんな先のことを考えたものです。
その後ロンドン→スイス→京都→ロンドン→欧州放浪の旅→神奈川→東京・青山→東京・二子玉川園→香港→米国コネチカット州→米国マサチューセッツ州ウォルサム→レキシントンと10回ほど引越し、25年が経過しました。その間に読んだ本と処分した本は数え切れないのに、今もこうしてちゃんと手元に残っているところにこの本への思い入れを感じます。
久々に引っ張り出して読み始めたところ、ついPoohの世界に引きずり込まれてしまいました。子供のころにあれほど大切な存在だったのに大人になって忘れてしまったぬいぐるみや人形がありますよね。そういうことも、Poohは思い出させてくれます。
The Winnie-the-Poohの最後にこうあります。
But, of course, it isn’t really Good-bye, because the Forest will always be there…and anybody who is Friendly with Bears can find it.
そして、The House at Pooh CornerではChristopher RobinがPoohにこう言います。
"Pooh, promise you won't forget about me, ever. Not even when I'm a hundred."
だからこの本は捨てられません。
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