著者:Ouisie Shapiro
出版社:Albert Whitman & Company
発売日:March 1, 2009
児童書(Amazon.comによると9~12歳用だが、私が読むかぎりでは小学校低学年向け)/写真ルポ
Amazon Vine™ Programで得た本(それについてはこちらを)。
「自閉症や難病にかかっている子供と親も大変だが、その子の健康な兄弟(姉妹)がその犠牲になることが多い。親が手のかかる子=かわいそうな子に全力を尽くしているために、健康な兄弟たちは無視されているか常に『良い子』であることを強要される。そのために深刻な心理的・社会的問題を起こすことがある」と心理学者の友人から聞かされたことがあります。
それゆえ、Autism and Me: Sibling Stories(自閉症と私:自閉症児の兄弟姉妹の体験談)というタイトルと写真を見て「兄弟の視点で書いた本だ」と思いこんで期待していたのです。
送られた本は写真を含めてたったの32ページで、あっという間に読めたのはよいのですが、正直肩すかしをくったような気分でした。
自閉症の子とその兄弟姉妹が自然な笑顔を浮かべて仲よさそうに触れ合っている写真には頬が緩みますし、健康な兄弟姉妹からの「自閉症があるからといって僕の兄/姉/妹/弟は馬鹿ではない」、「弟がいてよかった」といったメッセージも自閉症を知らない子供にとっては役立つものですし、心温まるものです。たとえばこんな感じです。
I feel lucky to have a brother like Ford because I’m exposed to more things. One time we were at the beach, and we saw hermit crabs. Ford called them spiders, and I thought about how they did look like spiders. So he helps me see different points of view.
この語り手Callieは、『良い子』であることを期待されている健康な兄弟姉妹のイメージそのものです。たぶん実生活でもとっても良い子なのでしょう。でも、きっとフラストレーションがたまること、理解してほしいことはあるはずなのです。それを乗り越えたうえで、「それでも私は弟が好き」という結論に達しているのだということが、この本のどの子のケースからもうかがえませんでした。それが残念でなりません。
私がこのように感じたのは、Amazon.comのReading Levelに9-12歳と書かれていたせいもあります。9-12歳を対象にした本であればもっと複雑な心境まで掘り下げるべきですが、どう考えてもこの本は小学校低学年対象です。そう思い直してみれば、この本を学校の図書にすれば、自閉症の兄弟姉妹がいる子が気兼ねせずに自分のケースを紹介するきっかけになりますし、差別をなくすクラスのディスカッションにも使えます。そういう意味で、ぜひ小学校の図書館において欲しい作品です。日本であれば、中学校の英語の授業に使って、英語でのディスカッションに利用すると生きた英語を学ぶことができると思います。
●読みやすさ ★★★★★
★★★★★と★★★★の中間。初心者向け。Reading Levelが9-12歳と書かれていますが、絵本より少々難しい程度です。
中学校3年生くらいの英語力で十分読めると思います。
コメント
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