Deanna Raybourn
2007年12月初刊
ミステリー/歴史スリラー/ゴシック・ロマンス
アガサ・クリスティ賞受賞作品
ヴィクトリア時代の英国貴族社会が舞台。Juliaの夫Sir Edward Grayが謎の死を遂げ、夫が生前に調査を依頼した私立探偵のNicholas Brisbaneが現れて誰かが夫を脅迫していたことを伝える。
BrisbaneはJuliaに疑いを抱いているのか、出会ったときから敵意のこもった態度を取る(第3巻でこの理由が判明する)。これまで妻として、娘として、おとなしく言いなりになってきたJuliaは過去の自分と決別し、自分の意見を持ちはじめる。
Brisbaneのかたくなな反対を無視してみずから謎解きに加わり、男娼専門の売春宿、よそ者には危険なジプシーのキャンプ、など上流階級の女性にはご法度のヴィクトリア時代の暗いロンドンを徘徊するうちに、幼なじみとしてすべてを知っているつもりだった夫の真の姿が明らかになってくる。
変わり者が集まったJuliaの家族、忠実な執事、癖のあるメイド、ジプシー集団、など登場人物がカラフルに描かれ、それだけでも十分楽しめる読み応えある歴史ミステリーシリーズの第一巻。
●ここが魅力!
他の歴史ミステリーより登場人物のキャラクターに魅力があります。
主人公のJulia Grayと私立探偵Nicholas Brisbaneは、本ブログでご紹介しているEmily Ashtonシリーズの主人公たちよりも複雑で欠陥があり、だから好感が抱けます。
ジプシーの血が混じっているBrisbaneはあまり紳士的ではなく、根暗で気分屋、呪われた超常的な才能を抑えるためのドラッグ中毒もあるようで、まるでHeathcliff, Sherlock Holmes, Mr. Darcyを足して3で割ったようなキャラです。そしてJuliaはEmilyのような絶世の美女ではなく、すでに29歳とけっこうなお歳です。
第一巻のSilent in the Graveではまだ盲目的な従順さから抜け出せずにいますが、第2巻、第3巻、と進んでゆくうちに、だんだんユーモアのある自立した女性になってゆき、Brisbaneをやりこめるようになってきます。シリーズが進むにつれて主人公が成長しているのが良いところです。
●読みやすさ ★★★☆☆
And Only To Deceive(Tasha AlexanderのEmily Ashtonシリーズ)より文章に重みがあり、あの当時に流行った言い回しや単語も使われているので、特に最初のうち読みにくさを感じるかもしれません。ですが、いったん読み始めると、どんどん引き込まれて読みにくさは減ることでしょう。
★★と★★★の中間です。
●アダルト度 ★★★☆☆
性的なテーマのせいで★3つですが、生々しい表現はありません。出版社のMiraの方針で第3巻ではまるでハーレクイーンロマンスのような表紙になっていますが、ロマンスではなくあくまでミステリーです。Victoria時代らしくロマンスの表現はキス程度まで。
●この本を楽しんだ方にはこんな本も……
* Lady Julia Grayシリーズ(後日書評を載せます)
Book 2: Silent in the Sanctuary
Book 4; Dark Road to Darjeeling
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コメント
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