先日お約束したBattle of Kids’ Bookの第一ラウンド第四マッチの審判Meg Rosoffの作品のレビューです。
現代から近未来の英国が舞台。十分な愛情を受けず拒食症になっていたニューヨーカーの15歳の少女Daisyは、娘に手を焼く父親から英国に住む亡くなった母親の姉の元に送られる。戦争の危機にさらされている英国の空港に到着してみると、迎えに来たのは14歳の従弟Edmondだった。免許のない彼の運転で夏の別荘であるファームハウスに到着した直後、叔母は戦争を回避するための会合に出席するためにノルウェイに旅立ってしまう。
叔母の留守の間Daisyは他人の心を読む能力があるEdmondと恋におちる。Daisyがそれぞれ個性がある従弟たちとおとぎ話のような田舎の農場の暮らしを楽しみ始めたときに、ついに戦争が勃発する。最初は噂にすぎなかった戦争は次第に子供たちの生活を侵食し、侵略者によってばらばらに引き裂かれたDaisyとEdmondはサバイバルのためにそれぞれの苦闘をすることになる。
従弟間の性的関係というタブーを扱ったこともあり、出版当時非常に話題になった作品。
Michael L. Printz賞受賞作
●ここが魅力!
いろいろな出来事がめまぐるしく起こるので、まったく飽きることないストーリーです。親からの愛情欠乏で心理的にダメージを受けている少女Daisyのシニカルで否定的な口調が、サバイバルのための苦闘と喪失というつらい体験で成熟してゆき、思春期のホルモンにコントロールされているような無責任なティーンの恋が本物の愛情に変わるところがこの本の読書体験に満足感を与えてくれます。
すっきりと完成された作品ではなく、それを批判する声もありますが、完成されていない雑なところがかえってDaisyのストーリーに本物らしさを与えていると思います。
●読みやすさ ★★★☆☆
15歳の少女の一人称の語りの形をとっているので、文法やボキャブラリーは簡単です。194ページと短いのも読みやすいところです。けれども、Daisyの語りは長々と続く傾向があり、会話が””でくくられていないので、英語に多少慣れていないと読みづらいでしょう。英語に慣れていてもフラストレーションを感じるかもしれません。したがって★★と★★★の中間です。
●アダルト度 ★★★☆☆
15歳と14歳の従弟同士の性的関係を伴う愛情がコアになっています。赤裸々な描写はないものの、読者の間では問題視される点です。高校生以上が対象。
コメント
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