著者:Lisa Carey
出版日:2000年10月
純文学/パラノーマル/ゴシックロマンス
孤独なアーティストと少女の幽霊の切なく美しいラブストーリー
今日は私の誕生日なので、とっておきの私のお気に入りをご紹介します。
舞台はメイン州の沖に浮かぶ小島。ボストン生まれの中年のアーティストOisin MacDaraは、愛する双子の妹Nieveが15歳のときに自殺して以来、誰とも心を通わせずに孤独に暮らしてきた。アイルランド系のOisinは生まれつき霊を見ることができるsecond sightを持っていたのだが、Nieveが死んでからはその能力を失っていた。けれどもOisinは、いつかNieveの霊が戻ることを信じて待っていた。
霊が蘇るというSpirit NightにOisinのもとを訪れたのはNieveの霊ではなく、150年前に船の難破で死んだ7歳の少女Aislingだった。Aislingの霊も、そのときに見失った兄を求めていたのだ。
生きたくて生きることのできなかったAislingは人間の少女として蘇るが、まるで生き急ぐかのように急速に成長してゆく。とまどいながらもAislingの世話をし始めたOisinは、初めて妹以外の人間に対する愛情を知るようになる。
アイルランドの迷信と伝説が織り込まれた、切なく、美しいラブストーリー。悲恋でも救いがある結末が長く心に残る。
この本に出会ったのは、ボストンで行われたブックフェアでのことでした。Uncorrected Proofにサインしてもらうときに初めて会った作者のCareyは、彼女の作品によく登場する少女たちのように感受性が強くて繊細な感じの若い女性でした。
評論家から高い評価を受け、出版社もキャンペーンに力を入れ、読者の評価が高かったにもかかわらず、なぜか商業的にはさほど成功を収めなかった作品です。邦訳されていれば絶対に好きになる人がいたと私は思うのですが。
●ここが魅力!
ともかく、文章が素敵です。匂いや色、肌の暖かさ、それだけでなく空気に含まれた水の粒子まで見えるような、すばらしい表現力と微妙な心理表現に、読み終えるのがもったいなくなります。たとえいつかは死ぬとしても、生まれてきて、いろいろな人と出会い、そしていろいろな愛を体験することのすばらしさに気づかせてくれる、そんな美しいラブストーリーです。
●読みやすさ ★★☆☆☆
非常に詩的な美しい文章ですが、ストーリーを追うのは難しいかと思います。
ただし、この本は一行ずつ味わいながら読むべき本ですから、そのつもりで読めば楽しめると思います。
いったん慣れると、読み終えるのがもったいなくて、わざとスローダウンしたくなるでしょう。
●アダルト度 ★★★☆☆
セックスシーンはありますが、ヤングアダルト程度の表現です。自殺も扱っていますし、中・高校生以上向けでしょう。
●この作品が気に入った人はこんな本も!
The Mermaids Singing
Careyの処女作。アイルランドの人魚伝説が織り込まれた、思春期の少女の危うい心理を描いた佳作。
Love In The Asylum
Careyの第3作は、精神科病棟で出会った2人のラブストーリー。
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