作者:Malcolm Gladwell
2008年初刊
ジャンル:ノンフィクション/社会心理・応用心理/ビジネス
アメリカ人ビジネスマンに大人気
ベストセラーで邦訳もされている「The Tipping Point」と「blink」の作者マルコム・グラッドウェルの最新刊。アメリカでは2008年11月18日に出版されたばかりだがすでにベストセラーのリストにあがっている。
「Outlier」とは、「他のものとは異なる、外れている」といった意味で異常値とも訳される。グラッドウェルがこの本で扱っているのは、一般集団から外れて並外れた成功を収めた者に共通するファクターである。
たとえばカナダのアイスホッケーのプロの選手には1月か2月の誕生日が多いが、それには意外な理由が潜んでいるようなのだ。また、他人よりもはるかに優れた才能があれば必ず成功するというものでもないことをグラッドウェルは指摘する。成功のためにはもちろんある程度の才能は必要だが、それと同等かそれ以上に育った環境やタイミングが影響を与えていることを彼は例を挙げて強調する。
こういったアイディアをマイクロソフトのビル・ゲイツやビートルズ、モーツアルト、といった誰でも知っている人物をあげて説明するのはこれまでにも使い古された手法だが、語りのテクニックのうまさがグラッドウェルをベストセラー作家にしているのだろう。
また、「なぜアジア人は数学ができるのか?」といったアメリカ人向けの解説は、日本人として別の意味で興味深い。
「The Tipping Point」ほど優れてはいないが、まちがいなくミリオンセラーになるだろう。
●読みやすさ ★★★☆☆
高校の教科書程度の文法です。
ジャーナリストのグラッドウェルは「よみやすさ」を尊重しているようで、非常に簡潔でわかりやすく、ノンフィクションとしては大変読みやす作品です。それぞれの逸話は短いので、苦労せずに読みきることができます。初心者にもお勧めのノンフィクションです。
●ここが魅力!
とにかく、読みやすいこと。語りもスムーズでいつの間にか引き込まれています。
「The Story of Success(成功談)」という副題のために成功へのハウツー本と誤解する方がいるかもしれませんが、そうではないので要注意。
また、グラッドウェルのセオリーに対して「あまりにも単純化しすぎている」という批判もありますが、彼はジャーナリストであって学者ではないので、そう目くじらを立てるのもお門違いです。私も彼の導いた結論に同意できない箇所が沢山ありましたが、「それは違うだろう」とひとりで反論するのも楽しみのひとつです。
この本がもっとも適しているのは、常に「なぜこんな現象が起きるのだろう?」と好奇心を抱く人でしょう。軽く手に取り、軽く読みながし、そして同じ本を読んだ人と意見交換するのに適しています。
ところで、私の周囲の中年以上の男性はみんなこの本を読んでいるようです。
●アダルト度 ☆☆☆☆☆
英語さえ読めれば小学生でも理解できるコンセプトです。親が説明に困るところは見当たりませんでした。
●この本を楽しんだ方にはこんな本も……
「The Tipping Point」by Malcolm Gladwell
「blink」by Malcolm Gladwell
「Hot, Flat, and Crowded: Why We Need a Green Revolution」 by Thomas L. Friedman
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