今月最も話題になった新刊は下記のGame Changeである(書評は洋書ファンクラブでどうぞ)。
ベテラン政治ジャーナリストのJohn Heilemann(New York Magazineの政治コラムニスト。これまでthe New Yorker, Wired, The Economistなどのライターを務めた)とMark Halperin(Timeマガジンの編集長でシニア政治アナリスト)の2人が書いた2008年大統領選挙の裏舞台と聞いたら、政治ジャンキーとしては読まないわけにはいかない(レビューはこちら)。
だが、発売日にアマゾンで在庫切れになってしまっために、私が入手したのは数日後だった。
こういう話題本だからこそ、誰よりも早く読みたいものである。だが、出版元のHarperはKindle版発売をわざと遅らせている(2月23日発売予定)。その理由は紙媒体のほうが出版社への収入が多く、紙媒体でも売れる本だとわかっていたからである。紙媒体で儲けてからKindleを出せば良いという考え方だ。
他にも紙媒体だけで売れるジャンルがあり、それにも共通している。一見賢そうな戦略だが、そうだろうか?
まずこの本の読者層は日頃から政治経済に関心があり、読書数も多い。つまりkindle愛用者層と一致しているのだ(ペイリン本の読者層とは異なる)。
発売当日に本屋に行かずして新刊を読み始められるのがKindleの魅力なのだが、その日から読みたかったこのGame Changeにkindle版がないと知って、kindle愛用者は怒りをAmazon.comの読者評価に「★ひとつ」という方法でぶつけ始めた。
ひとつやふたつではない。1月26日午前6時現在、なんと188人もが★ひとつの最低評価をしているのだ(中には内容についてのものもあるが)。最高の★5つが73人なので、この本の平均評価はたったの★2つになっている。
「それでも結果的には売れているから良いではないか」と思う人はいるだろう。
だが、それは近視的な考え方だ。
多くの★ひとつレビューアーが指摘しているように、この本には旬がある。Kindleでなければ読まないと決めている人は多いのだから、旬を逃したら彼らはもうこの本を読まない。また、本屋に行ってまで買いたくないが、 kindleだとつい衝動的に買ってしまうという人もいる。
それよりも問題なのは出版社の「読者コントロールするのは自分だ」という態度である。AppleやGoogleが成功しているのは、ユーザーの視点で開発してきたからだ。出版社が「どうすれば読者にとって本が読みやすいだろう?」という視点を持たない限り、出版界は不況から立ち直れない。
そう強く感じた現象である。
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