「洋書を読もう!」と決意した人が最初に犯す失敗には次のパターンがあるのではないでしょうか。
1)意気込みがありすぎて難解な本に挑む。
2)日本語で読んだかあるいはよく知っているクラシックを選ぶ。
3)自信がないので絵本からスタートする。
1)の問題は明らかですね。3ページまで読んだら偉いものです。
2)は洋書初心者のときに私も経験しました。「嵐が丘」に挑戦し、みごとに挫折!それからアガサ・クリスティ。クリスティファンだった私は英語で読んでちっとも入り込めないのに大ショックを受けました。クラシックは当時流行の言い回しや文体を使っていますからネイティブでも現代人には読みづらいのです。最初は現代の作品から始めましょう。
3)フランス語を習い始めたときに絵本を読みましたが、幼児用のストーリーには「次どうなるのか知りたい」という意欲がなかなかわきませんでした。まるで教科書を読んでいる気分になります。読みやすさは、必ずしも難易度ではなく、モチベーションを持たせてくれるかどうかにかかっています。
それでは、どんな本であれば失敗しないのでしょう?
1)学校で学ぶ程度の文法のもの。単語もできれば学校で習う程度が理想です。したがってネイティブの小学校高学年を対象とした本が適しています。最初はあまり美文ではないものがよいでしょう。
2)現代文学の中から選びましょう。
3)先を知りたくなるストーリー性があるものが理想です。子供もそうですから、小学生や中学生に人気がある分野はアニマル・ファンタジーやファンタジー、SFです。それらが苦手な方にはユーモアや風刺小説という手もあります。あまりにも子供じみた内容のものは避けましょう。読む気がうせますから。
それを念頭に、次はおすすめの本のサンプルです
ステップ1(小学校3年生から高学年向け)
このサイトの「読みやすさ★★★★」に相当します
●アニマル・ファンタジー(動物が主人公のファンタジー)
「The Poppy Stories」 by Avi
ネズミたちが主人公の冒険シリーズ。大胆で怖いもの知らずの青年ネズミRagweedの活躍を語る「Ragweed」、Ragweedの恋人で小柄のPoppyが勇気を奮い起こして仲間を救うために出かける冒険「Poppy」、悲劇の後のロマンス「Poppy and Rye」そしてPoppyの友達のハリネズミが主人公のユーモアがある「Ereth's Birthday」と4冊です。登場する動物たちにすんなりと感情移入でき、つい一緒になって笑ったり、涙をこぼしたり、胸を躍らせたりするでしょう。冒険、悲劇、ロマンス、ユーモアが全部そろっています。「Poppy」が一番有名ですので、これを気に入ればPoppyシリーズ全部を読むことをおすすめします。
もし「Poppy」が見つからないときには、Aviによる別の本をおすすめします。いずれの本もドラマに満ちて面白く読めます。
●SF
「A Wrinkle in Time」
タイムトラベルもの。1964年の作品なのに、今でも子どもに人気があります。
●ユーモア
「Diary of a Wimpy Kid」by Jeff Kinney
弱虫の少年が日記の形で語る、こっけいな日常。アメリカで大ベストセラーになったシリーズ。軽いものを読みたい方、アメリカの少年の心境に興味がある方に適しています。
ステップ2(小学校高学年から中学校)
一般的にはこのサイトの「読みやすさ★★★」に相当しますが、本により文章の難易度には差があります。
●アニマル・ファンタジー(動物が主人公のファンタジー)
「Redwall (Redwall, Book 1)」by Brian Jacques
Poppyシリーズを卒業したら、次はもっと複雑なRedwallシリーズに進みましょう。
ファンタジーと冒険が好きな人であれば、大人でもやみつきになること請け合いです。
突如分厚くなりますから、読み終えるのには時間がかかるかもしれません。お気に召したら、このシリーズはどんどん続きますからしばし他の本を選ぶ必要はないでしょう。
「Warriors-Into The Wild(Warriors シリーズ1」
猫好きであれば、ここに登場する猫の野生への憧れや放浪と闘いの衝動を応援したくなるでしょう。でも、主人公の猫たちはちっとも可愛くなくてまるでギャングメンバーの縄張りあいの話ですからご了承を。発売当時から爆発的な人気になり、現在数え切れないほどの続編が出ています。
●純文学(ファンタジー)
「The Music of Dolphins」by Karen Hesse
どのカテゴリーに入れるべきか迷ったのですが。。。
航空機事故で生き残り4歳のときからイルカに育てられた少女が、人間に救出され言葉を学んでゆくけれど、イルカの家族との生活を忘れることができずだんだん不幸になる。その過程を本人が書いた日記のようにつづっているのがミソ。ちょっと「アルジャーノンに花束を」を思い起こさせるストーリーで、涙が出ます。
●SF・ファンタジー
「Coraline」by Neil Gaiman
古い屋敷で起こる不気味な出来事。。。ストーリーテラーの天才GaimanによるちょっとホラーなこのSFはあっという間に読み終えることができるでしょう。200ページ以下。
●社会風刺・近未来
「The Giver」 by Lois Lowry
失業も貧困もない近未来の理想郷だが、本当に人類は幸福なのか?作者のLowryに会ったことがあるのですが、多くの作品を書いているとは思えないほどひとつのテーマについて熟慮するタイプのようです。大人が読んでも十分楽しめ、そして考えさせられる作品です。動物ものやロマンスなどが苦手な人におすすめ。
ステップ3(ヤングアダルト)
一般的にはこのサイトの「読みやすさ★★★」に相当します。ヤングアダルトのカテゴリーは、取り扱っているテーマのために高校生以上を対象としていますが、文章の難易度には大きな差があります。
簡単なものでは、小学校高学年対象のものよりも読みやすく、難しいものは、大人が対象のものよりも難解なことがあります。
●心理スリラー
Speak by by Laurie Halse Anderson
過去に受けたトラウマのために話せなくなってしまった少女が自分を取り戻す過程を描いています。「なぜなのか?」という謎を抱えてたどりつく最後に驚きのツイストがあります。短く、ヤングアダルトの中では読みやすいレベルです。
●近未来・SF
「How I Live Now」by Meg Rosoff
近未来の英国で、世界戦争にまきこまれたアメリカ人少女とそのイギリス人従兄たちとの生き残りのための苦悩を描いた不思議な雰囲気の物語です。読んだ後にも長く印象が残るでしょう。短いので完読しやすいと思います。
●純文学
「The Curious Incident of the Dog in the Night-Time」by Mark Haddon
自閉症の少年の視点で語った「犬殺人事件」の真相解明。登場人物たちがとてもよく描かれていて、読後の満足感が高い作品です。これも短いので完読しやすいでしょう。
●ファンタジー
「Eragon (Inheritance, Book 1)」by Christopher Paolini
作者のPaoliniがドラゴンのファンタジーを書いたのは彼がたった15歳のときです。だからといって決して読みやすいわけではありません。登場人物は多いし、ファンタジー特有の造語も多いですし、そして分厚い本でもあります。読み終えるのには時間がかかると思いますが、達成感もあるでしょう。
●ロマンス・ファンタジー
「Twilight」 by Stephenie Meyer
吸血鬼と人間の少女の恋、と書くといかにも。。。ですが、クラシックのゴシックロマンスを思わせる完成度が高いファンタジーロマンスです。とても読みやすいので、分厚い本ですが、あっという間に読み終えてしまうでしょう。
今流行っている児童書については、「ベストセラーリスト」もご参考に!
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