作者:Benjamin Wallace
2008年初刊
ジャンル:ノンフィクション/食/歴史
アメリカ第三代大統領トーマス・ジェファソンが所有していたといわれる1787年 Château Lafite Bordeauxがロンドンのクリスティーズで競売にかけられる。当時、史上最高額(156,000ドル)で競り落とされたこのヴィンテージワインに対し、即座に「贋物」だという噂が広まる。疑いの中心は、謎のドイツ人収集家Hardy Rodenstockである。クリスティーズのワイン専門家で名物競売人のMichael Broadbentはこのボトルにお墨付きを与えるが、その後もまれなヴィンテージワインが競売にかけられるたびにRodenstockの名前が浮かび上がる。
ジャーナリストのBenjamin Wallaceは、ヴィンテージワインの競売という謎に満ちた特殊な世界の内情を、まるでミステリー小説のように紹介してくれる。
●読みやすさ ★★☆☆☆
文法は基本的で英語力はさほど必要としませんが、ワインについての知識がないと、固有名詞が面倒に思えるでしょう。また、ワインの真贋を調べるための科学的な手段の説明はやや難しく感じるかもしれません。
でも、おもなハードルは一番面白い部分に差しかかるまでに時間がかかり、そのテンションが保てずにフォーカスがあちこちに飛ぶことです。
●ここが魅力!
なんといっても、何百万円から何千万円(あるいは億を超える)もするヴィンテージワインの競売という、一般庶民にはまったく無縁の世界を覗き見させてくれるのが魅力。
わが家にも別の分野のコレクター(わが夫)がいるので、彼らのオブセッションについては慣れているつもりでした。ですが、コルクを開けるまで本物か贋物かわからないワインに、しかも飲んでしまったらそれまでのものに、これだけの大金を払う人の心理は理解しがたいものです。それに、ライバルに勝ってせっかく競り落としたワインをワイン狂の友だちで分かち合って飲んでしまうというのも不可解です。コレクターではない私ですが、「このペースで飲んでいたら、世界からまれなヴィンテージワインが消えてしまうじゃないの!」とムッとしてきました。
でも、もっと理解不能なのは、この世界の達人を相手にして堂々と贋物を作る人の大胆さです。どうやらヴィンテージワインコレクションの世界は、作り話よりも信じられない世界のようです。
1本30ドルのワインを買うとものすごく贅沢な気分になる私などには、ヴィンテージのシャトー・ラフィットの味なんて想像できません。読んでいる途中で「もうちょっとワインについて知りたい!」と意欲を抱いたりしましたが、読後は「贅沢なテイストを持たない私はラッキーだ」と思い直しました。30ドルのカリフォルニア産Pinot Noirで十分リッチな気分になれる私のほうが億万長者より幸運だと思います。
●アダルト度 ★★★☆☆
特に子供が読んで問題になる部分はありませんが、話題が話題(高価なヴィンテージワイン)なだけに子供が読んでも面白くないでしょう。
●この本を楽しんだ方にはこんな本も……
「French Lessons: Adventures with Knife, Fork, and Corkscrew」 by Peter Mayle
「A Year in Province」 by Peter Mayle
「Educating Peter」by Lettie Teague
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