著者:Martine Bailey
ペーパーバック: 400ページ
出版社: Hodder Paperback
ISBN-10: 1444768735
発売日: 2015/1/29| Thomas Dunne Books版ハードカバーは (2015/1/13)
適正年齡:PG15(性的な話題あり。表現は露骨ではない)
難易度:上級レベル(特に難しい文章ではない)
ジャンル:歴史小説(1772年英国、フランス、イタリア)/スリラー/大衆小説
キーワード:18世紀ヨーロッパの料理、上流階級と召使の階級、毒、仮装、レシピ、ロマンス
1772年。イギリスの北西部チェシャーにある貴族の館Mawton Hallでundercook(調理人の助手)をしている22歳のBiddy Leighは、自分の生活に満足していた。料理人のMrs. Garlandとは実の母親以上に親しく、村の女たちの憧れの的のJemとも密かに結婚の約束をしている。料理人の仕事が大好きなBiddyは、Jemと一緒に宿屋を営み、毎日料理を作る将来を夢見ていた。
ところが、ある日予告もなく領主の新しい妻が館に現れ、Biddyのささやかな日常がすっかり変化してしまう。
泣く泣く旅に出たBiddyは、南の島で捕まって奴隷になったLovedayと親友になり、旅先で新しい味に出会い、レシピを集めていく。旅を進めるうちに、BiddyはLady Carinnaが何かを企んでいるのに気づいてくる。最初のうちはイギリス式の食事を作るために雇われたと思っていたけれど、ほかに理由がありそうだ。
奇妙な企みに巻き込まれたくないと思いつつも、召使の立場では主人の命令にそむけない。いやいやながらも、Biddyは偽りの計策に巻き込まれていく。
1772年にイギリスのチェシャーを出発し、1年半かけてフランスを南下してイタリアのトスカーナを旅したBiddyの日記(一人称)、Lovedayの視点(三人称)、Lady Carinnaの弟Kittの視点(三人称)、登場人物たちが取り交わした手紙などで語られる歴史小説である。
主人公のBiddyが利発で現実味がある性格だったことに好感が抱けたし、彼女が語り手の章がレシピで始まるのも良いアイディアだ。「こんな作り方で美味しいの?」とか「なんにでもMace(メース。ナツメグの種の回りにある赤い皮の部分)を使うのね!」とか考えるのが楽しかった。Biddyがいやいやながらもやらされる虚構の役割(ネタバレなので詳しくは書かない)のシーンも面白い。
後の世に残る傑作ではないけれど、食べ物が出てくる歴史小説、英国の上流階級と召使の生活を描いた小説、または小説にミステリが入っているのが好きな人にはお薦め。仕事の後やバケーション中にリラックスして楽しめる。
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