著者:M. R. Carey (Mike Carey)
ペーパーバック: 512ページ
出版社: Orbit (2014/6/19)
ISBN-10: 0356500152
発売日: 2014/6/19
適正年齢:PG 12+(残酷シーンあり)
難易度:中〜上(たまに難しい表現は出てくるが、シンプルな文章とスピーディな展開で読みやすい)
ジャンル:ホラー/SF
キーワード:世紀末、ディストピア、サバイバル、(この右に、ネタバレのキーワードを白文字で書いています)、ゾンビ、人肉食い
文学賞:2015年 The James Herbert Award候補作
小さな少女Melanieは、独房に住んでいる。毎朝、その独房に軍曹と兵隊が来て、頭に銃をつきつけられたまま車いすに固定されてクラスメートが待つ教室に向かう。教室にはMelanieのような小さな子どもたちが集まっているけれど、みんな首も固定されているのでお互いを見ることもできない。
Dr. Caldwellが「our little genius(私たちの小さな天才)」と呼ぶMelanieは学ぶことが大好きだ。とくに綺麗で優しい女性教師のMiss Justineauにあこがれていて、毎日がMiss Justineauの日だったらいいのにと思っている。
これまでの出来事を観察していたMelanieは、クラスメートがときどき姿を消して二度と戻ってこないことに気づく。あるとき二人が姿を消し、その後で、いつもは笑顔で対応してくれるMiss Justineauが一日中悲しそうに目を合わせないでいた。不安を覚えていたMelanieの独房に軍曹がやってきて、教室ではなくDr. Caldwellの研究室に連れて行く......。
私は怖いのが苦手なので、ふだんはホラーを読まないことにしている。
The Girl with All the Giftsは、いろいろ探しているときに偶然出会って読み始めた作品なので、ホラーのジャンルに属するとはまったく知らずに読んでいた。
途中で「ひょっとして...」と思って調べたら、なんと今年新しくできたイギリスのホラー文学賞The James Herbert Awardの候補作だという。「どうりで怖いわけだ...」と納得したのだが、せっかく途中まで読んだので最後まで読み通した。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、読んでいる間にCormac McCarthyのThe Road、John Wyndham のThe Day of the Triffids 、Richard Matheson のI Am Legend (映画のほうじゃなくて原作のほう)を思い出した。それらの本を知っている方なら、だいたい想像がつくかと思う。
最近YAファンタジーのジャンルで流行っている「ディストピア」だが、このディストピアはまったく異なるテイストなので、そこに新鮮さを感じた。「どうやって終わるつもりなのか?」と思っていたが、やはり最後にどんでん返しが待っていた。
著者のCareyにとって本書は小説としてはデビュー作になるが、アメコミのライターとしてのキャリアは長い。現在もX-Men: Legacy、Ultimate Fantastic FourといったMarvel Comicsのストーリーを書いている。映画の脚本も書いており、これらの経験が本書The Girl with All the Giftsに活かされている。一瞬のたるみもないスピーディな展開で、いったん引き込まれたら、最後まで(怖くても)読むのをやめたくないだろう。
著者にコミックと映画の世界が長いためか、登場人物たちはややカリカチュアに感じる。だが、このストーリーを展開させるためには、それぞれの特徴を強めに書く必要があったのかもしれない。それ以外は、文句なく上出来の世紀末SF、ホラーである。
*The James Herbert Awardは、2013年に亡くなったイギリスのホラー作家James Herbert(ジェームズ・ハーバート)を記念して、出版社のPan MacmillanとHerbertの遺産管理者が協力して始めた新しいホラー文学賞。イギリスの出版社から英語で刊行された作品が対象。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。